ダイドーリミテッド 臨時株主総会
日時:2024年12月17日(火) 10:00-11:45(株主総会+中期経営計画進捗状況説明会)
場所:神田明神文化交流館(御茶ノ水駅徒歩5分)
出席株主数:約60名
お土産:無し
企業情報
ダイドーリミテッド(3205)
①事業者向けの衣料用繊維素材および消費者向けの紳士・婦人衣料製品などの製造販売を行う「衣料事業」(売上構成比90%)を中心に、ショッピングセンター店舗・事務所用ビル・ホテル施設の賃貸などを行う「不動産賃貸事業」(売上構成比10%)を運営。
②筆頭株主は、毛織物染色大手のソトー(3571)で、159万株、5.6%を保有。
③株主優待
3月末
100株:ECサイト20%買物割引券
500株:4,000円相当優待品、ECサイト20%買物割引券
1,000株:10,000円相当優待品、ECサイト20%買物割引券
9月末
100株:ECサイト20%買物割引券
株式情報
時価総額:279億円(2024年12月16日時点)
売上高:286億円(2024年3月期実績)⇒287億円(2025年3月期予想)
株価:910円(2024年12月16日時点)
1株純資産:514円(2024年9月末時点)、PBR:1.77倍
1株当期純利益:38.8円(2025年3月期予想)、PER:23.4倍
1株配当:100円(2025年3月期予想)、配当性向:257%
配当利回り:10.9%、株主優待含む利回り:12.0%(1,000株保有時)
株主数:17,941名
会計基準:日本会計基準
株主総会前の事前情報
①2025年3月期第2四半期は、衣料品業界においては、コロナ禍からの経済正常化による反動需要は一巡したものの、引き続き旺盛なインバウンド需要に支えられ、おおむね堅調な推移となった。このような経営環境のなか、当社グループは「お客様第一」「品質本位」の経営理念を基に、2027年3月期に至る3ヵ年の中期経営計画の達成に向けて、注力事業の効率化と収益力の強化に取り組んでいる。衣料事業においては、小売部門の主力ブランドのひとつである「ブルックスブラザーズ」が適切な商品政策の実施やインバウンド需要を追い風に売上高を大きく伸ばした一方で、イタリアの製造部門においてウクライナにおける紛争に起因する取引先の在庫調整が長期化していることや、中国経済の停滞により中国国内の小売部門の売上高が減少したことなどにより前年比で減収減益となった。不動産賃貸事業においては、前年に賃貸用不動産の組み替えが完了したことや、2024年4月に小田原の商業施設「ダイナシティ」の新館がオープンしたことで集客力が向上し来館客数が増加したことなどにより、前年比で増収増益となった。また、各報告セグメントに配分していない全社費用において、定時株主総会の開催に関連する費用が前年比で増加した。以上の結果、当中間連結会計期間における売上高は13,718百万円(前年比1.9%減)、営業損失は456百万円(前年は営業損失370百万円)、経常損失は483百万円(前年は経常損失224百万円)、親会社株主に帰属する中間純損失は202百万円(前年は純損失390百万円)となった。
②2024年11月12日に、2025年3月期通期連結業績予想を減収増益修正。イタリアの製造部門では取引先の在庫調整が長期化していることによって計画に比べて売上高が大きく減少。停滞が引き続き継続することが想定され、また、中国経済の低迷の影響により消費者の購買意欲が著しく悪化していることによって中国小売部門の売上高が直近の想定を下回る見込み。国内小売部門においても 10月以降も気温の高い日が続いていたため、秋冬衣料の売上高が直近予想比で減少となることを想定。固定資産売却益の計上により、繰延税金負債の取り崩しに伴う法人税等調整額を計上予定であるため、親会社株主に帰属する当期純利益は当初の予想から大きく修正。
③2024年7月4日開催の取締役会において、株主還元に関する方針および配当予想の修正について決議。実質的な筆頭株主であるストラテジックキャピタルと定期的に面談を行い、企業価値の向上策や、その実現のための当社グループが保有する賃貸等不動産の有効な活用方法などについて、意見交換を行ってきた。また、当社株主である南青山不動産およびそのグループ会社の大株主である村上世彰さんからも面談の申し入れを受け、当社の企業価値向上に向けた議論を行ってきた。村上世彰さんは当社の業績や今般の状況、などを憂いているとのことで、当社の株主価値向上に資するとの考えから、当社にご意見やご提案をいただいた。当社はストラテジックキャピタルおよび村上世彰さんをはじめとする株主の意見も参考にし、2024年6月27日開催の当社第101回定時株主総会で新たに選任された取締役8名で構成される取締役会にて議論を重ね、様々な事業シナリオ、株主価値向上施策の検討および試算を行った結果、「株主価値の最大化」「事業の継続性及び従業員の雇用の安定性」「成長実現のための新規投資余力の確保」の3点を重視し、株主還元の強化や成長のための投資を図ることが、株主価値の向上を図るうえで重要であるとの結論に至り、同日開催の取締役会において、株主還元の強化として、一定期間内における配当の増額、および株式市場からの自己株式の取得について決議した。自己株式の取得については、金額として最大50億円程度を想定しているが、当社株式の市場価格の推移、財務状況などを勘案した上で、機動的に実施したいと考えており、現時点では具体的な期日は決定していない。2025年3月期の配当予想は、5円から100円へ大幅修正。株主還元の強化を行うことがさらなる株主価値の向上に資すると判断し、同日開催の取締役会において、2025年3月期から2027年3月期までの3ヵ年を対象とする中期経営計画の期間中の3年間においては、1株当たり年間100円の配当実施を基本方針とすることを決議。
④2024年7月4日に、2024年6月27日開催の定時株主総会でストラテジックキャピタルからの株主提案により選任された取締役の中山俊彦さんが辞任。
就任後、わずか1週間程度での辞任に大きな違和感。
⑤2024年5月20日に、中期経営計画を公表。2027年3月期に、売上高360億円、営業利益15億円、株主還元(配当)12円(配当性向30%)。
⑥社外取締役を除く取締役6名の報酬等の総額は5,500万円。2023年6月に2名が入替ったことを考慮すると、単純平均で取締役1人当たり1,375万円。使用人兼務取締役の使用人分給与は含まず。
使用人兼務取締役の使用人給与や、子会社などからの報酬も含めた金額が提示された方が、株主から見て実態が分かりやすいと思う。
株主総会での個人メモ
①株主総会終了後、中期経営計画の進捗状況説明会あり。中期経営計画の進捗状況説明会は、会長の山田政弘さんが説明対応されていた。
②取締役の村田正樹さんは、オンラインでの出席。
③質疑応答で、「7月4日に公表した株主還元が決定した経緯」について質問あり。「ステークスホルダーの意見を参考に全会一致で決定した。株主価値向上・最大化が目的。」との旨の回答。
④質疑応答で、「7月4日に公表した株主還元について、特定株主とのコミュニケーションはあったのか?」との質問あり。「個別の内容については回答を控える。」との説明。
⑤質疑応答で、「7月4日に公表した株主還元は、特定株主に利益を与えるためでは?」との質問あり。「全ての株主の株主価値に資すると判断した。」との回答。
⑥質疑応答で、「今回の2つの議案は、7月4日に公表した株主還元の実施が目的なのか?社外取締役の大澤道雄さん、村田正樹さんから意見を伺いたい。」との質問あり。取締役の白子田圭一さん、社外取締役の大澤道雄さんから、「7月4日に公表した株主還元、50億円の自社株買いをやりやすくするため。株主還元については、外部の専門家に相談し、取締役会で相当な議論を重ねた。特定の株主に対する対応ではなく、7月4日に公表した株主還元は実施可能と考えている。」との旨の回答。
⑦質疑応答で、「7月4日に公表した株主還元が決まった後、ストラテジックキャピタルと村上世彰さんとは何かコンタクトがあったのか?」との質問あり。「ストラテジックキャピタルと村上世彰さんが株式を売却した後は、コンタクトは無い。」との説明。
⑧質疑応答で、「取締役の服装は硬いスーツ姿だが、アパレル企業なので自社のブランドの雰囲気に合った服装としたらどうか?」との意見あり。
⑨質疑応答で、「今回の2つの議案について、なぜ前回の定時株主総会や次回の定時株主総会ではなく、本臨時株主総会での対応としたのか?」との質問あり。「実施したい資本政策ができるようになる。」との回答。
前回の定時株主総会時点では、7月4日に公表した株主還元の内容はまだ確度が低く、次回の定時株主総会では一部施策が間に合わないものと思えた。
⑩質疑応答で、「7月4日に公表した株主還元のうち、50億円の自社株買いについて時期などの詳細を公表していない理由は?」との質問あり。「株価の状況や事業運営状況などを考慮して実施したい。まだ詳細は決まっていない。」との説明。
⑪質疑応答で、「自社株買いをした後は、償却する予定なのか?金庫株とする予定なのか?」との質問あり。「M&Aを実施する際に株式交換に利用する手段もある。まだ決めていない。」との回答。
⑫質疑応答で、「中期経営計画では、2027年度の最終年度にM&A分を含めて営業利益15億円程度。一方で、7月4日に公表した株主還元は、自社株買いで50億円、3年間の配当総額で70億円以上、合計で100億円を超える。また自己資本比率も30%程度と財務的に強いわけではない。株主還元の原資は固定資産の売却によるものなのか?」との質問あり。「不動産賃貸事業で、ホテルとオフィスビルから賃貸収入を得ている。2物件を売却予定。ただし、ダイナシティは利益が出ており継続保有する。衣料事業の改善を実施していく。」との説明。
⑬質疑応答で、「中国リスクへの考えは?」との質問あり。「中国は経済状況が不安定で、コロナ以降悪化している。リスクが高いと見ている。」との回答。
⑭質疑応答で、「ブルックスブラザーズは2020年に破綻したが、現在のライセンスフィーはどのようになっているのか?」との質問あり。「オーセンティック・ブランズ・グループがブルックスブラザーズを取得し再生している。現在の所有者にライセンスフィーを支払っている。」との説明。
⑮質疑応答で、「業績への為替の影響は?」との質問あり。「国内販売については、円安は利益にマイナスの影響がある。一方で、ポンテトルトや中国の縫製工場では、円安はプラスの影響。簡単には言えないが、ある程度ヘッジはしている。」との回答。
⑯質疑応答で、「なぜ配当金額を100円としたのか?例えばM&Aも考慮し50円でもよかったと思うが、100円とした根拠は?」との質問あり。「「株主価値の最大化」「事業の継続性及び従業員の雇用の安定性」「成長実現のための新規投資余力の確保」の3点を重視し、取り巻く経済環境も考慮した。」との旨の説明。
⑰議案の採決方法は拍手での採決。議決権の過半数を保有する大株主もいない状況で、出席者により保有している議決権数も違うので、デジタル時代に会場の拍手の多数で賛否を決めるのでは基準が曖昧に感じる。投票方式を採用したりして、その場で数字で示したほうが株主総会に出席している株主から見て納得感がある。
株主総会を終えて感じたこと
株主総会時点、株式は未保有ですが、今回、実際に社長や取締役を間近に見てその振る舞いを確認できたこと、会社の雰囲気を感じられたことが株主総会に参加した大きなメリットでした。
株主総会と中期経営計画進捗状況説明会では、多くの質問が出ており、社長の成瀬功一郎さんと取締役の白子田圭一さんを中心に丁寧に回答対応をされていました。
中期経営計画進捗状況説明会では、株主総会特別対策費用(アクティビスト対策費用)として1.35億円の費用がかかった旨を強調されていましたが、現状況と今後の経営方針がよく分かる説明でした。
ストラテジックキャピタルと村上世彰さんは、大量保有報告書の変更報告書を見ると、保有株式を2024年7月5日に全株売却しています。7月5日の株価は1,070~1,095円で推移していたので、ストラテジックキャピタルと村上世彰さんから見て、「7月4日に公表した株主還元」を考慮したうえでも、株価1,070~1,095円は売却しても良い株価に見えたとのことなので、大量保有時の株式売却時の流動性の問題があったにせよ、この株価は目先の指標になるかもしれません。
質疑応答での説明を聞いた限りでは、大盤振る舞いに見える「7月4日に公表した株主還元」についても、利益や手持ちの現預金以外にも、保有不動産の売却など、原資の当てはありそうです。
説明を聞くまでは、ストラテジックキャピタルと村上世彰さんを株主から追い出すための経営者の保身のための株主還元に見えましたが、社長の成瀬功一郎さんや会長の山田政弘さんから直接話を聞いた後では、印象が良い方向に変わりました。
過度な期待はしませんが、2024年6月の定時株主総会前後の騒動を契機に「やる気スイッチ」が入ったことによる、業績の向上と営業黒字化を期待しています。ブルックスブラザーズは愛着のあるブランドでもあり、再投資も検討します。