スパンクリートコーポレーションの株主総会に出席しました【2025年4月10日】

株主総会
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スパンクリートコーポレーション 臨時株主総会

日時:2025年4月10日(木) 11:00-11:25

場所:ホテル機山館(本郷三丁目駅徒歩2分)

出席株主数:約10名

お土産:創立60周年記念の社名入りカラビナ、ペットボトルのお茶の配布あり

 

企業概要

スパンクリートコーポレーション(5277)

HP:株式会社スパンクリートコーポレーション

①建築用床・壁・屋根の材料として建築業界に広く採用されている「スパンクリート」を主要な製品として、製造・販売の事業を行う「スパンクリート事業」(売上構成比66%)、オフィスビルなどの賃貸業を手掛ける「不動産事業」(売上構成比11%)、建設用柱・梁・バルコニーなどのプレキャストコンクリート製品の製造・販売事業を行う「プレキャスト事業」(売上構成比23%)を運営。

②筆頭株主は、三菱マテリアル(5711)とUBE(4208)の子会社のMUCC商事で、118万株、16.0%を保有。
社長の村山典子さんの資産管理会社の機械の製作・販売などを手掛ける日本スパンクリート機械が、第2位の株主で、村山典子さん個人での保有分も含めると、171万株、23.1%を保有。
日本製鉄(5401)の子会社の日鉄SGワイヤが、第4位の株主として、60万株、8.1%を保有。
社長の村山典子さんの親族の村山知子さんが、第5位の株主として、47万株、6.3%を保有。
紀文食品(2933)が、第7位の株主として、20万株、2.7%を保有。

③従業員数は、79人のみと少人数体制。

 

株式情報

時価総額:42億円(2025年4月9日時点)

売上高:20.3億円(2024年3月期実績)⇒13.5億円(2025年3月期予想)

株価:450円(2025年4月9日時点)

1株純資産:702円(2024年12月末時点)、PBR:0.64倍

1株当期純利益:▲72.5円(2025年3月期予想)、PER:赤字

1株配当:無配(2025年8月期予想)、配当性向:無配

配当利回り:無配

株主数:1,649名

会計基準:日本会計基準

 

株主総会前の事前情報

連結子会社であった岩瀬プレキャストが2024年5月15日付で破産手続開始決定がなされたことに伴い、当第1四半期会計期間より非連結決算に移行した。同社が営む「プレキャスト事業」からの撤退に伴い、同事業の報告セグメントを廃止し、「スパンクリート事業」および「不動産事業」の2事業に報告セグメントを変更。

②2025年3月期第3四半期は、大統領の交代により米国の通商政策が不透明であり、強硬な関税引き上げが行われた場合、我が国への影響と共に世界経済の混乱は避けられず、重大な不安要素として捉えられている。この間、建設市場においては、住宅着工件数が前年比微減の傾向だが公共建設投資は前年比3%増程度の傾向となっている。しかしながら、原材料価格の上昇に伴い資材価格の上昇や労務単価の上昇が要因で建設コストの増加傾向は続いていくものと思われる。当社においては、原材料高騰の価格転嫁が一部で進んだが、主要原材料のセメント、PC鋼線の高騰は継続する見通しで、価格転嫁の交渉が継続して必要になっている。また、通年の出荷総数量が昨年並みの見通しで、工場の低稼働が続いている。このような状況下で当第3四半期累計期間の業績は、売上高1,080百万円、営業損失208百万円、経常損失200百万円、四半期純損失248百万円となった。

③スパンクリート事業は、原材料高騰の価格転嫁の進展により一部で改善がみられたものの、出荷数量の低迷が続いている。その結果、売上高902百万円、セグメント損失287百万円となった。

④不動産事業は、賃貸用不動産が高稼働を維持し、安定的に収益を確保した。この結果、売上高178百万円、セグメント利益79百万円となった。

⑤2025年2月14日開催の取締役会において、2025年4月10日開催予定の臨時株主総会を招集し、本臨時株主総会において、株式併合、単元株式数の定めの廃止および定款の一部変更について付議すること、ならびに本臨時株主総会の招集のための基準日設定について決議。当該取締役会決議は、当社の普通株式が上場廃止となる予定であることを前提として行われたもの。東京証券取引所スタンダード市場における上場廃止基準に該当することとなる。これにより、当社株式は、2025年4月10日から2025年5月8日までの間、整理銘柄に指定された後、2025年5月9日をもって上場廃止となる予定。

⑥今般、当社は、当社の株主を、当社の主要株主であり筆頭株主であるMUCC商事、当社の主要株主かつ当社の代表取締役社長である村山典子さんの資産管理会社である日本スパンクリート機械、村山典子さん、および村山典子さんの親族である村山知子さんのみとし、当社株式を非公開化するための手続として株式併合を実施し、その後、当社の株主を創業家株主らのみにすることを企図して、MUCC商事の保有株式の全てについて当社が自己株式取得を実施する予定。なお、当社の代表取締役社長である村山典子さんは、本非公開化手続後も継続して当社の経営にあたることを予定している。

⑦本株式併合により、当社の株主は残存株主らのみとなり、残存株主ら以外の株主の保有する株式の数は、全て1株未満の端数となる予定。本株式併合により生ずる1株未満の端数については、会社法に基づき、裁判所の許可を得た上で、当社が買い取ることを予定しており、その買取りに係る代金を端数が生じた株主に対して交付する予定。この場合の買取価格については、必要となる裁判所の許可が予定どおり得られた場合には、本株式併合の効力発生日の前日である2025年5月12日の最終の当社の株主名簿において残存株主ら以外の株主が保有する当社株式の数に460円を乗じた金額に相当する金銭が交付されるような価格に設定することを予定している。なお、村山典子さんによれば、残存株主らおよび日鉄SGワイヤは、本臨時株主総会において本株式併合に係る議案に賛同する予定であるとのこと。また、当社は、MUCC商事との間で、本非公開化手続を通じて、MUCC商事に対して、MUCC商事が所有する当社株式の数(1,187,600株)に460円を乗じた金額に相当する金銭が交付されるよう、本自己株式取得における取得価格を定めることを合意している。

⑧スパンクリート事業では、建築用床・壁・屋根の材料として建設業に広く採用されているスパンクリートを主要な製品として、その製造・販売の事業を運営している。スパンクリートは、縦方向に数個の中空孔をもち、PC鋼線によってプレストレスを与えられたコンクリート板であり、耐久性能、断熱性能、遮音性能および耐火性能で優れた特性を有していることに加えて、工場での量産も可能であり、プレハブ化による工期の短縮や工事の省力化に貢献できることから、当社創業以来、オフィスビル、マンション、鉄道駅、運河遊歩道、土留め壁など様々な建設工事において採用実績を蓄積してきた。他方で、特に近年は、原材料価格・エネルギー価格の上昇によるコスト増加の一方で他社製品との激しい価格競争が続いており、2020年3月期より2024年3月期まで5期連続でセグメント損失を計上するなど、業績の低迷が続いている。今後においても、スパンクリート事業については厳しい事業環境が続くことが予想される一方で、不動産事業によるスパンクリート事業のセグメント損失の打ち返しに期待するのも限界があると考えており、当社全体としては、将来に亘って安定的かつ継続的に利益を創造する状態からは程遠く、予断を許さない経営環境にあるものと考えている。

⑨村山典子さんは、上記のような極めて厳しい経営環境の下、そのような経営環境を克服し、当社事業の競争優位を取り戻し、事業を存続させ、中長期的な企業価値の向上を目指すためには、抜本的な取り組みが急務であると考えているとのこと。具体的には、「スパンクリートの生産ラインを生かした、新製品の開発」「コスト競争力強化を目的とした、宇都宮工場への効率化投資」「所有不動産のリノベーション投資」のような施策を実施することが必要と考えているとのこと。村山典子さんは、当社が、将来に亘って事業を存続させ、更なる成長を目指すためには上記の各施策を早急に実施する必要があると考えている一方で、当社株式を上場させたままこれらの各施策を実施することは、当社の業績悪化リスクを当社の株主に負担させることにつながりかねず、当社が上場維持したまま各施策を推進することに限界があると考えるようになったとのこと。また、村山典子さんは、当社の上場以降、当社は知名度の向上による優れた人材の確保、社会的な信用力の向上など、上場企業として様々なメリットを享受してきたものの、こうした知名度や社会的な信用力の向上などについては株式の上場以外の方法によっても実現可能であること、現在の財務状況などから、当面は借入による資金調達によって必要資金を賄い、エクイティ・ファイナンスの活用による大規模な資金調達の必要性は見込んでいないこと、当社株式の上場を維持するために必要なコスト(有価証券報告書等の継続的な情報開示に要する人的負担、株主総会の運営や株主名簿管理人への事務委託に要する金銭的負担、内部統制関連コスト)を踏まえると、今後も継続して当社株式の上場を維持することの意義を見出しにくい状況にあると考えているとのこと。さらに、当社は2024年6月28日に公表した「上場維持基準の適合に向けた計画書」において、スタンダード市場の上場維持基準の一つである「流通株式時価総額」について、10億円が当該基準となっているところ、2024年3月31日時点で、当社は6.8億円と当該基準に適合しておらず、2026年3月末日までに上場維持基準に適合すべく、各種取り組みについて公表している。村山典子さんとしては、当社が未だ業績回復の見通しが立っていないこと、上記のような企業価値向上のための抜本的な施策を講じる場合にも短期的に更なる業績悪化を伴う可能性があること、および当社株式のスタンダード市場における流動性が乏しく非流通株式の市場放出および新株発行などの流通株式比率を向上させるための実効性のある対策をとることが困難であることなどに鑑みると、上記「流通株式時価総額」基準への抵触により、経過措置を経て上場廃止となる可能性があり、結果として将来的に当社の株主において当社株式の売買の機会が奪われてしまう事態が生じる可能性があると考えているとのこと。以上のような検討を経て、村山典子さんは、当社が上記施策を実施するにあたっては、当社株式を非公開化することが、当社の株主に対して発生する可能性がある上記悪影響を回避しつつ、中長期的な視点から抜本的かつ機動的な経営戦略を迅速かつ果敢に実践するために最も適切な手段であるという結論に至り、2024年12月5日、当社に本株式併合の実施に向けた提案を行ったとのこと。

⑩不動産事業の賃貸用ビルとして、駒込スパンクリートビル(東京都文京区)が4.7億円(土地は2.2億円)、茅場町駅前ビル(東京都中央区)が7.6億円(土地は6.2億円)、神田TNKビル(東京都千代田区)が9.3億円(土地は6.1億円)、また、総括業務施設として本社などの土地が1.6億円で資産計上あり。

⑪ストリームに当社の株式価値の算定を依頼。不動産事業については主として鑑定評価額に依拠しつつ、個々の物件の時価を積算することにより評価し、スパンクリート事業については当社がストリームに提供した当社の2025年3月期から2032年3月期までのスパンクリート事業に関する事業計画、当社の2025年3月期第2四半期における財務情報、一般に公開された情報等の諸要素を前提として、当社が 2025年3月期第3四半期以降に創出すると見込まれるフリー・キャッシュ・フローを一定の割引率で現在価値に割り引いて企業価値や株式価値を算定し、当社株式の1株当たりの価値を376円から466円までと算定している。なお、割引率は4.5%から7.3%を採用しており、また、継続価値の算定にあたっては永久成長率法を採用し、永久成長率は0.5%から1.5%として算定している。株式価値の算定に際し、当社から提供を受けた情報、一般に公開された情報などを使用し、それらの資料、情報などが全て正確かつ完全なものであることを前提としており、独自にそれらの正確性および完全性の検証を行っていない。また、個別の資産および負債の分析および評価を含め、当社の資産および負債(簿外資産および負債、その他の偶発債務を含む。)に関して、独自の評価または鑑定を行っておらず、倒産、支払停止またはそれらに類似する事項に関する適用法令の下での当社の信用力についての評価も行っていない。また、本特別委員会が取得した不動産鑑定書を除き、これらに関していかなる評価書や鑑定書の提出も受けていない。

⑫当社は、当社株式の非公開化取引の目的・意義、当社株式の非公開化取引後の経営方針、提示された当社株式の価格などについて、本特別委員会からの意見も踏まえながら、慎重に検討および協議した結果、村山典子さんの提案内容が当社の企業価値向上に資すると判断され、また、当社は、公開買付けを前置せずに本株式併合を実施する手法については、(i)残存株主らを含む賛同株主らが当社の総議決権の53.73%を保有しており、加えて持株会などの当社関係者や過去より議決権を行使いただいており、当社と良好な関係にある株主の協力が見込めること、当社の過去の株主総会における議決権行使状況(当社の直近3期の各定時株主総会の議案ごとの議決権行使比率は75.17%から79.55%の範囲内で推移)などを踏まえると、本臨時株主総会における本株式併合に係る議案について議決権を行使する株主の3分の2超の賛成が見込まれることから、本株式併合を実施するために公開買付けを前置する必要は必ずしもなく、(ii)また、仮に公開買付けを前置する場合には、公開買付代理人への報酬を含む公開買付けに係るアドバイザー費用などが発生するところ、これらのコストを考慮すると、公開買付けを前置する場合、少数株主に分配可能な金額が公開買付けを前置せずに株式併合を実施する場合に比べて限定的となり得る上、公開買付期間を含む追加的な時間が必要になるが、公開買付けを前置しない場合これらが不要となり、より低コストかつ短期間で当社株式の非公開化が可能となること」、(iii)少数株主が本株式併合に係る端数処理により株主に交付することが見込まれる金銭の額に不満があるとして本株式併合に反対する場合には、法令上、一定の要件の下で株式買取請求権が認められており、少数株主は公正な株式買取価格の決定を求めて裁判所に申立てを行うことができるなど、少数株主の利益保護に資する制度が設けられていることなどから、不合理とはいえないとの考えに至り、かつ村山典子さん以外の本最終選定プロセス候補先からの最終提案書の提出がなかったため、2025年1月23日付で、村山典子さんを最終候補先として選定する結論に至った。

⑬本件端数処理交付見込額は、当社の2024年12月31日現在の簿価純資産額である5,218 百万円を当社の2024年12月31日現在の自己株式控除後の発行済株式数(7,424,639 株)で割ることにより算出した1株当たり純資産額である703円(本件端数処理交付見込額は当該金額との比較で35%のディスカウント)を下回っているが、仮に当社が清算する場合においては、原材料や商品在庫、機械設備などの一括処分時に一定の価値毀損が予想されること、また、本社オフィスおよび宇都宮工場の閉鎖に伴うコスト(原状回復費用や解体工事費、土壌汚染対策工事費など)、従業員に対する割増退職金および弁護士費用などの追加コストが発生することなどを考慮すると、簿価純資産額がそのまま換価されるわけではなく、相当程度の毀損が見込まれる。また、純資産額は、将来の収益性を反映するものではないため、継続企業である当社の企業価値の算定において重視することは合理的ではないと考えている。

⑭社外取締役を除く取締役2名の報酬等の総額は2,925万円。単純平均で取締役1人当たり1,462万円。使用人兼務取締役の使用人分給与は含まず。
使用人兼務取締役の使用人給与や、子会社などからの報酬も含めた金額が提示された方が、株主から見て実態が分かりやすいと思う。

 

株主総会での個人メモ

①取締役の席に名札が無かったのが気になった。名札があった方が、会社の顔となる役員の方々の顔と名前が一致するので親切だと思う。

②質疑応答で、「2022年から赤字が続き、東証からPBR1倍への改善要請がある中で、PBR0.6倍の買取価格で上場廃止となる。経営が上手くいかなかった結果だと思うが、建設業界が好調な中、経営が上手くいかなかった理由についてどう考えているのか?」との質問あり。「製造業として事業環境が良くなかった。当社の製品がお客様から受け入れられにくくなっている。鉄道関連の受注が無くなってしまった。」との説明。

③質疑応答で、「前社長が経営していた時は黒字であったが、経営者が現社長の村山典子さんに代わってから業績が悪化したと思う。」との旨の意見あり。「真摯に受け止める。」との回答。

④質疑応答で、「460円の買取価格について、PBR1倍の700円程度とすべきだったのでは?公開買い付けではない点にも不満がある。」との旨の意見あり。「460円は算定機関が出した価格なので、この価格で容赦いただきたい。」との説明。

⑤質疑応答で、「2025年5月9日の上場廃止後、再度、上場を目指すことはあるのか?」との質問あり。「現時点、再上場は考えていない。」との回答。

⑥議案の採決後、第1号議案に反対の株主については、受付で手続きをするようにとの説明あり。

 

株主総会を終えて感じたこと

株主総会時点、株式は未保有ですが、今回、実際に社長や取締役を間近に見てその振る舞いを確認できたこと、会社の雰囲気を感じられたことが株主総会に参加した大きなメリットでした。

質疑応答では、社長の村山典子さんが丁寧に回答対応されていました。また、上場企業としては最後の株主総会であり、株主総会終了時に挨拶もされていました。

質疑応答でも質問が出ていましたが、東京証券取引所のフォローアップ会議で「MBO・支配株主による完全子会社化に関する企業⾏動規範の⾒直し」が提示される中、今回、1株純資産702円に対し、買取価格460円での株式併合の実施によ上場廃止に違和感を感じました。

主力のスパンクリート事業は、当面赤字が続く見込み(事業計画では、営業利益ベースで黒字転換できるのは2032年)とのことで、かなり厳しい状況に見えます。

一方で、業績は悪化していますが、自己資本比率は82.5%あり、財務内容的にもまだ健全です。財務状況が悪化する前に、「既存製品の価格競争力(利益が確保できるレベルまで値上げできるのか?)」や「価格競争力のある新製品の開発力」などを冷静に分析し、場合によっては、スパンクリート事業については事業譲渡などで撤退、もしくは、スパンクリート事業の知見を活かせる新規事業への取り組みや、利益の出ている不動産事業へ注力することが会社存続の一手になるかもしれません。

公開買付けを行わずに株式併合の実施により上場廃止するケースとして、今後の参考にします。

 

株主総会会場のホテル機山館
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