ID&Eホールディングスの株主総会に出席しました【2024年9月26日】

株主総会
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ID&Eホールディングス 第1回定時株主総会

日時:2024年9月26日(木) 10:00-11:10

場所:ID&Eホールディングス本社(四ツ谷駅徒歩5分)

出席株主数:約40名

お土産:無し

 

企業情報

ID&Eホールディングス(9161)

HP:ID&Eホールディングス (id-and-e-hd.co.jp)

①日本国内外における河川・水資源、上下水道、農業農村整備・開発、ダム・発電、交通・運輸(道路・鉄道・港湾・空港)、都市・地域開発、地質・防災・砂防、環境、情報システムなどに係わる調査、計画、評価、設計、工事監理、マネジメントなどをおこなう「コンサルティング事業」(売上構成比54%)を中心に、都市空間形成における事業組成、計画・設計、運営をおこなう「都市空間事業」(売上構成比28%)、電力機器、制御装置などの製造・販売ならびに機電・通信施設などの計画・設計、工事、工事監理ならびに分散型エネルギーリソースを活用したエネルギーマネジメントをおこなう「エネルギー事業」(売上構成比18%)を運営。

ノルウェー政府が、第9位の株主として、30万株、2.0%を保有。

 

株式情報

時価総額:647億円(2024年9月25日時点)

売上高:1,598億円(2024年6月期実績)⇒1,650億円(2025年6月期予想)

株価:4,290円(2024年9月25日時点)

1株純資産:6,032円(2024年6月末時点)、PBR:0.71倍

1株当期純利益:484円(2025年6月期予想)、PER:8.86倍

1株配当:175円(2025年6月期予想)、配当性向:36%

配当利回り:4.0%

株主数:7,836名

会計基準:IFRS

 

株主総会での個人メモ

①株主総会は、ID&Eホールディングスの本社での開催。

②取締役と執行役は小さな名札を胸に付けていたが、株主席からは名前が見えなかった。見えやすい名札があった方が、会社の顔となる役員の方々の顔と名前が一致するので親切だと思う。

③議長は、取締役の有元龍一さんが務められ、代表執行役社長の新屋晴彦さんが、ID&Eホールディングス設立の目的や成果、新中期経営計画を説明されていた。

④当社グループを取り巻く経営環境は、日本を含む各国にて社会経済活動が正常化する一方、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とする世界的なエネルギー危機と食料危機、またインフレの進行や為替変動に加えて中東地域における紛争など、国際情勢における不確実性が高まっている。コンサルティング事業では、国内市場は引き続き国土強靭化に向けた公共事業予算が確保され、特に大規模災害対策や予防保全型インフラメンテナンスなどの市場拡大と防衛関連インフラ事業の拡大が期待される。また、海外市場は日本政府による「インフラシステム海外展開戦略2025」を軸にODA予算が強化され、紛争・被災地域における復興支援が必要となっている。そしてPPP(Public Private Partnership)、民間資本によるインフラ開発も増加傾向にある。一方、インフレや為替変動、国際情勢の不安定な状況は継続すると見られる。都市空間事業では、国内および欧米諸国においてESG投資を呼び込むサステナブルな都市構造の再構築のニーズが高まる一方、開発途上国においては交通関連施設や周辺基盤の整備を含む都市開発事業のニーズが旺盛。エネルギー事業では、国内における老朽化した既設設備の更新需要は堅調と見込まれる。2050年カーボンニュートラル目標に向け、再生可能エネルギーへのシフトという流れは変わらないものの、世界的なエネルギーコストの上昇による政策変更に対しても機敏に対応する必要がある。

⑤こうした市場環境のもと、当社グループは「ID&Eグローバル戦略2030」の第1ステップとなる2021年7月から2024年6月までをグループ強靭化に取り組む変革期と位置付け、中期経営計画「Building Resilience 2024」に基づく3つの強靭化策を実行した。1つ目の強靭化策としては、これまでの5事業を3つのドメイン(コンサルティング、都市空間、エネルギー)に再編し、事業軸を強化した。2つ目の強靭化策では、持株会社体制への移行によるガバナンスの強化と地域統括体制の整備によるマトリクス経営(各事業が地域ごとに相互に連携を図る経営)の実現に向け、取り組んだ。3つ目の強靭化策としては、ID&Eグループとしてのブランドと品質の確立に向け、技術開発および人財育成に係る強化策を講じた。また、そのための基盤として「Well-being経営」を推進した。以上の結果、当社グループの当連結会計年度の業績は、受注高は各事業とも好調に推移し前期比15.9%増の161,357百万円、売上収益は主にエネルギー事業が順調に進捗し前期比12.3%増の158,983百万円となった。営業利益は、コンサルティング事業の増益が寄与して前期比132.3%増の14,124百万円となった。それに伴い親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比212.8%増の9,677百万円となった。

⑥コンサルティング事業では、日本工営を中心に、各事業分野でのシェア向上に加えて、流域治水・気候変動・SDGs・再生可能エネルギー・マルチハザードといった分野横断的な共創事業の推進、マネジメント事業の展開や民間セクターの拡大などに取り組んだ。以上の結果、受注高は国内事業の好調により前期比11.8%増の86,568百万円、売上収益は前期比4.9%増の85,488百万円となった。営業利益は、資本参加先の株式上場に伴う評価益を約21億円計上していることによ前期比63.8%増の10,647百万円となった。

⑦都市空間事業では、日本工営都市空間が要員確保や品質管理の徹底による生産体制の強化に、BDP HOLDINGS LIMITEDおよびその子会社が英国国内およびグループ間協業によるアジア市場開拓と北米市場における業務拡大に取り組んだ。以上の結果、BDP HOLDINGS LIMITEDの好調により、受注高は前期比17.2%増の49,874百万円、売上収益は前期比16.8%増の44,460百万円となった。営業利益は1,968百万円(前期は946百万円の損失)となった。

⑧エネルギー事業では、日本工営エナジーソリューションズ(2023年9月以前は、日本工営エネルギー事業統括本部)を中心に、蓄電池やアグリゲーション事業といったエネルギーマネジメント事業を本格展開させるとともに、既存の機電コンサルティング・エンジニアリング事業の体制強化と製造事業の安定化に取り組んだ。以上の結果、受注高は主に変電所工事や発電施設運営管理関連の事業の好調により、前期比29.8%増の24,446百万円、売上収益は大型蓄電池事業や電力設備関連事業が大きく伸び前期比33.9%増の27,925百万円となった。営業利益は、前期に当社関連会社であったPT.ARKORA HYDRO株式の売却益および有価証券運用益の計上などが約19億円あった反動で前期比17.0%減の2,470百万円となった。

⑨当社グループは、コンセプトを「共創。限界なき未来に挑む」とする長期経営戦略「NKGグローバル戦略2030」を2021年6月に発表した。社内および社外の多様なパートナーとの「共創」を通じ、知の探究と技術の革新・統合により新たな価値を提供し、人々が豊かさを実感できる社会の実現に貢献する企業グループを目指し、2030年6月期の数値目標を売上収益2,500億円、営業利益250億円、営業利益率10%、ROE15%としている。その実現に向けて、当社グループは、2023年7月3日に持株会社体制へ移行した。持株会社体制への移行は、「自律と共創」の推進に加えて、ガバナンスの強化と意思決定の迅速化および多様性の確保が目的。また、市場環境の変化およびID&Eグループの持続的成長に向けた事業領域を再検討のうえで、2024年6月にマテリアリティ(最重要課題)を「分断・格差のない世界の構築」「すみよい地球環境の実現」「共創による新たな社会課題への挑戦」「多様なグループ人財の活躍」「誠意と技術を軸にしたグループ経営」の5つに改定した。「NKGグローバル戦略2030」を引き継いだ「ID&Eグローバル戦略2030」および新マテリアリティのもと、2024年7月から2027年6月までを展開期と位置づけ、中期経営計画「Building Growth 2027」を策定した。2027年6月期の数値目標を売上収益1,980億円、営業利益180億円、営業利益率9%、ROE12%としている。基本方針を「主力3事業の持続的成長と事業間の共創による事業領域の拡大」とし、3つの展開策(成長に向けた改革、マトリクス経営の展開、人財・技術の進化)に取り組む。コンサルティング事業においては、国内市場では国土強靭化に向けた公共事業予算が確保され、防衛関連事業は予算の増加に伴い、良好な市場環境が期待される。海外市場では円借款を含めたODA事業は過去最大規模の予算となり、民間資本によるインフラ開発のニーズも高まる一方で、インフレ・円安によるコスト上昇の懸念がある。都市空間事業では、持続可能なまちづくりへの要請が高まり、また新興国においては都市基盤整備などによる高効率な都市整備需要が旺盛。エネルギー事業では、2050年カーボンニュートラル目標に向け、再生可能エネルギーの主力電源化、その変動を吸収する蓄電などが推進され、脱炭素のトレンドは長期に続く一方、様々な企業の新規参入による競争も見込まれる。こうした市場環境のもと、当社グループは中期経営計画「Building Growth 2027」(2024年7月から2027年6月まで)に基づく3つの展開策(成長に向けた改革、マトリクス経営の展開、人財・技術の進化)を実行している。

⑩2025年6月期は、コンサルティング事業においては、日本工営を中心に、国内市場では主に道路事業・防衛事業などでシェア拡大を、海外市場では稼働率の向上や生産構造の見直しにより収益性向上を図る。また、国内外ともに民間事業の拡大やAI・自動設計の活用による生産性向上を目指す。都市空間事業においては、日本工営都市空間が生産体制の強化とコスト構造の見直しによる経営基盤強化を、BDPがグループ各社との協業などによるAPAC展開の強化と北米における事業拡大に取り組む。エネルギー事業においては、日本工営エナジーソリューションズを中心に、蓄電池を中心としたエネルギーマネジメント事業の拡大と水力発電関連部門の集約による製造事業の付加価値向上を推進する。これらの取り組みを推進することで、2025年6月期業績予想は、売上収益1,650億円(前期比103.8%)、営業利益は2024年6月期に資本参加先の株式上場に伴う評価益を約21億円計上した反動により減益で122億円(前期比86.4%)、親会社の所有者に帰属する当期利益73億円(前期比75.4%)としている。

⑪PBR改善に向けた取り組みとして、ポートフォリオマネジメントをはじめとする中期経営計画の着実な実行と資本最適化により株主資本コストを上回るROE12%実現とPBR向上を目指す。株主還元を強化(配当性向30%目処、DOE2.5%以上を目安)。

⑫ID&Eホールディングスの社名は、「Integrated Design & Engineering」の頭文字から。「Design」と「Engineering」は、前・長期経営戦略から推進してきた「土木×建築」に加えエネルギー事業を含めた総合コンサルティング&エンジニアリング企業としての当社の事業を表現している。また、今後は様々な分野を統合し(Integrated)、ワンストップで事業を進めていくという想いが込められている。

⑬質疑応答で、「業績が好調だったが、特に良かった点と課題点を教えて欲しい。」との質問あり。「国土強靭化の政策もあり、国内の市場環境がとても良かった。一方で、海外のコンサルティング事業において、情勢不安もありタイムリーな対応ができなかった。」との説明。

⑭質疑応答で、「建設業2024年問題、建築資材費の高騰、金利の上昇について、業績へどのような影響があるのか?」との質問あり。「2024年問題については、コロナ前より社内の残業時間関連の対応は実施済み。資材費高騰については、国の予算も決まっている中でゼネコンのほうに資金が回ったことで、結果、数%の影響が出てしまっている。金利上昇については、今のところ大きな影響は無い。」との回答。

⑮質疑応答で、「今期の業績予想について、増収減益の理由は?」との質問あり。「IFRSを適用しているため、株式の評価益が営業利益に上乗せされたが、今期は通常の状態に戻る。株式の評価益を除いて見ると順調に成長している。」との旨の説明。

⑯質疑応答で、「会社四季報に「エネルギー事業は受注好調も工事進捗減速」とある。状況を教えて欲しい。」との質問あり。「資材調達に苦労しており、進捗が落ちている。この2年間で回復しつつあるが、まだ入手に苦労している資材もある。」との回答。

⑰質疑応答で、「HPを見てもどんな会社なのか良く分からない。」との意見あり。「コンサルティング事業、都市空間事業、エネルギー事業として多くの事業を手掛けている。資料を開示しているので確認して欲しい。」との説明。
出席株主から指摘があった通り、会社がどのような事業をおこなっているのか外部から見ると分かりづらい。IR対応として、「xx事業のyyの案件では、zzの仕事(aa工程からbb工程まで)をおこない売上を得ている」などの例を各事業で挙げ、投資家に対して事業内容を分かりやすくPRした方が、会社に対する理解が深まり、結果、株価向上にもつながると思う。

⑱質疑応答で、「売上高に対する通貨別の割合」について質問あり。「詳細は割愛するが、約1,600億円のうち、約900億円が日本。海外では多様な通貨で決済している。ポンド建てが多くなってきた。中期経営計画では、海外を増やすことを想定している。」との回答。

⑲質疑応答で、「ミャンマーのODA事業の状況は?」との質問あり。「ミャンマーは、当社の海外事業として第1号の案件として水力発電所を手掛けた。今は中断しており、売上はほとんど無い。」との説明。

⑳質疑応答で、「情勢不安の中、海外従業員の安全確保はどうしているのか?」との質問あり。「緊急時のマニュアルなどを作成し対応している。例えば、先日のバングラデシュでの混乱時には社員を一時引き上げた。」との回答。

㉑質疑応答で、「自然災害が起きた場合のリスク管理は?」との質問あり。「自然災害については、会社としては機会の方が多いが、首都直下型地震で本社に被害が出ているとの想定で、シンガポールに対策本部を設置した訓練をおこなった。」との説明。

㉒質疑応答で、「女性管理職の割合と目標は?」との質問あり。「土木系の事業なので女性比率は少ない会社。全体の人員の20%弱が女性。管理職の割合としては5%程度。2030年には15%以上とする目標。新卒採用では、約30%が女性。」との回答。

㉓取締役候補者8名中、70歳以上の候補者は有元龍一さん(1952年生まれ、71歳)、市川秀さん(1946年生まれ、77歳)、日下一正さん(1948年生まれ、76歳)、小泉淑子さん(1943年生まれ、80歳)の4名。役員定年制(一般的には65歳~70歳)を設定して、未来のために次世代育成を進めたほうがよいと思う。

㉔社外取締役を除く取締役と執行役11名の報酬等の総額は47,300万円。単純平均で取締役1人当たり4,300万円。

㉕議案の採決方法は拍手での採決。議決権の過半数を保有する大株主もいない状況で、出席者により保有している議決権数も違うので、デジタル時代に会場の拍手の多数で賛否を決めるのでは基準が曖昧に感じる。投票方式を採用したりして、その場で数字で示したほうが株主総会に出席している株主から見て納得感がある。

 

株主総会を終えて感じたこと

株主総会時点、株式は未保有ですが、今回、実際に社長や取締役を間近に見てその振る舞いを確認できたこと、会社の雰囲気を感じられたことが株主総会に参加した大きなメリットでした。特に今回、ID&Eホールディングス本社内での開催でしたので、良い機会となりました。

業績が良いものの、株価が低位で放置されていますが、質疑応答で指摘があった通り、具体的に何をやって売上を上げているのか分かりづらい会社なので、IR対応として、会社の業務内容を分かりやすく投資家にPRした方が会社に対する理解が深まり、結果、株価向上にもつながるのではと思いました。

なお、IFRS適用会社なので、償却の発生しないのれんの状況や、営業利益に株式評価損益が含まれる点などは要注意です。

2023年3月に、東京証券取引所が「PBR1倍割れの企業に改善要請」を実施しましたが、ID&Eホールディングスは、1株当たり純資産6,032円に対し、株価が4,290円(2024年9月25日時点)、PBR0.71倍と低迷しており、PBR1倍達成に向けた施策が求められます。

取締役8名中、70歳以上の取締役が4名と、取締役会の高齢化が気になりますが、国土強靭化の恩恵を受け、業績のさらなる向上を期待しています。再投資も検討します。

 

株主総会会場のID&Eホールディングス本社
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