オルツ 臨時株主総会(延会)
日時:2025年9月29日(月) 10:00-10:45
場所:相互館110タワー(京橋駅直結)
出席株主数:約10名
お土産:無し、ミネラルウォーターの配布あり
企業概要
オルツ(260A)
①当社グループの「P.A.I.」(パーソナル人工知能)の実現のために研究開発を重ね蓄積させてきた要素技術と、多くの戦略的パートナーとのリレーションを活用した課題発掘力および優秀なエンジニア陣によるプロダクト開発力、AIの社会実装力を基盤とすることで、Communication Intelligence「AI GIJIROKU」などのAIプロダクトの開発・提供を行うAX Products & Trading事業や、AIの活用を検討するクライアントに対して、コンサルティング、PoC、本番開発から協業販売までのプロジェクト遂行の支援を行うAX Research & Solutions事業を提供。
②筆頭株主は、前社長の米倉千貴さんで、600万株、17.2%を保有。
③従業員数は、23名(連結で75名)と少人数体制。
④不正会計が明らかになり、7月30日付で東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、8月6日には民事再生手続き開始の決定を受ける。新規上場申請に係る宣誓書において宣誓した事項について重⼤な違反を⾏ったものと認められるため、2025年8月31日に上場廃⽌。
株式情報
時価総額:1.8億円(2025年8月29日、上場廃止前最終取引日)
売上高:60.5億円(2024年12月期実績)⇒84.5億円(2025年12月期予想)
※2025年7⽉25⽇に、第三者委員会の調査報告書により2024年12月期の売上高を10.7億円へ訂正。
株価:5円(2025年8月29日、上場廃止前最終取引日)
1株純資産:115円(2024年12月末時点)、PBR:0.04倍
※2025年7⽉25⽇に、第三者委員会の調査報告書による指摘を受けて、最終的な影響の確定作業を進めると公表も、公表が無いまま2025年8月31日に上場廃止。
1株当期純利益:△55.7円(2025年12月期予想)、PER:赤字
※2025年7⽉25⽇に、第三者委員会の調査報告書による指摘を受けて、最終的な影響の確定作業を進めると公表も、公表が無いまま2025年8月31日に上場廃止。
1株配当:無配(2025年12月期予想)、配当性向:無配
配当利回り:無配
株主数:12,196名
会計基準:日本会計基準
株主総会前の事前情報
①2025年4⽉25⽇開催の取締役会において、第三者委員会の設置を決議。「4⽉初旬より、証券取引等監視委員会の調査を受けており、これを端緒として確認を進めたところ、当社の「AI GIJIROKU」の有料アカウントに関し、⼀部の販売パートナーから受注し計上した売上について、有料アカウントが実際には利⽤されていないなど、売上が過⼤に計上されている可能性が認めらた。「AI GIJIROKU」は、当社が2020年1⽉に提供を開始したプロダクトであり、当社としては、「AI GIJIROKU」の⼀部の販売パートナーの受注分における有料アカウントに係る売上計上額に関する事実関係を明らかにするべく、調査の専⾨性および客観性を確保した調査が必要と判断し、当社と利害関係を有さない弁護⼠および公認会計⼠からなる第三者委員会を設置し、同委員会による調査を実施することとした。2025年12⽉期第1四半期の決算発表については、2025年5⽉14⽇に予定していたが、第三者委員会による調査に時間を要することから、当初のスケジュールでの発表は難しいと判断した。今後の発表については、調査の進捗状況を踏まえ、適切に対応していく。」と公表。
②2025年6⽉4⽇開催の取締役会において、2025年8⽉中旬頃に開催予定の臨時株主総会招集のための基準⽇設定について決議。付議議案は、ガバナンス体制の強化を図るため、取締役の追加選任。
③2025年6⽉5⽇に、朝⽇新聞朝刊において、当社が循環取引という⼿法で決算を粉飾し、売上の
7割を⽔増しした可能性がある旨の報道がなされた。
④2025年7⽉25⽇に、第三者委員会の調査報告書受領。当社の「AI GIJIROKU」に関する販売パートナーから受注し計上した売上の⼤半に関して、広告宣伝費または研究開発費の⽀払名⽬で資⾦を⽀出し、当該資⾦について広告代理店を経由する形で⼀部の販売パートナーに対して⽀払い、最終的に当該販売パートナーから⽀払を受けることにより売上代⾦を回収していた事実などが確認されたとして、売上⾼、広告宣伝費および研究開発費が過⼤計上されたとの指摘を受けた。売上高については、2021年12月期から2024年12月期までで137億円に対し119億円(86.3%)が過⼤計上。広告宣伝費は、2022年12月期から2024年12月期までで110億円に対し106億円(96.8%)が過⼤計上。
上記指摘を受けて、連結財務諸表および財務諸表に与える最終的な影響の確定作業を進めていくと公表。
⑤2025年7⽉28⽇に、「2025年7⽉25⽇付で株式会社東京証券取引所より、監理銘柄(審査中)に指定された。」と公表。当社の開⽰内容から、「1.有価証券報告書など(上場申請のための有価証券届出書および有価証券報告書)を訂正する内容が重要であり、当社が虚偽記載を⾏った場合に該当すると認められる相当の事由があり、今後の審査の結果いかんによっては、直ちに上場を廃⽌しなければ市場の秩序を維持することが困難であると当取引所が認める場合に該当するおそれがあること」、および「2.当社が提出した新規上場申請に係る宣誓書において宣誓した事項について、今後の審査の結果いかんによっては重⼤な違反を⾏った場合に該当するおそれがあることから、当社株式について監理銘柄(審査中)に指定された」との通知を受けた。
⑥2025年7⽉28⽇に、「2025年7⽉26⽇に代表取締役社⻑である⽶倉千貴さんから、同月28
⽇付けで辞任する旨の申し出があり、当社はこれを受諾するとともに、本⽇辞任届を受理した。なお、⽶倉千貴さんは、新たに選任された取締役が就任するまでの間、引き続き取締役としての権利義務を有する。新たに、取締役CFOの⽇置友輔さんが、代表取締役に就任する。」と公表。
⇒「第三者委員会による調査報告書の中では、新たに代表取締役に就任する⽇置友輔さんについての関与も指摘されており」との記載もあり、⽇置友輔さんの代表取締役に就任に違和感。
⑦2025年7⽉29⽇に、第三者委員会の調査報告書の詳細を公表。「過年度の有価証券報告書などおよび決算短信について、第三者委員会による調査結果を踏まえて、過年度の有価証券報告書、および内部統制報告書の訂正報告書の提出ならびに決算短信および四半期決算短信の訂正のための作業に着⼿している。2025年12⽉期第1四半期の決算(決算短信)の発表が出来る状態になったら、速やかに決算発表予定⽇を開⽰するとともに、決算内容および業績予想の修正⾒込み有無を発表する。」と公表。
⑧調査報告書に、「当社は2021年4月以降、複数の広告代理店と販売パートナーの組み合わせによる本件SPスキームを形成してAI GIJIROKUに係る売上を拡大させていた一方、AW監査法人からAI GIJIROKUに関する内部統制の不備などを指摘されていた。AW監査法人は、当社に対し、2021年4月23日、監査結果概要報告(2020年12月期)を提出し、その中で、内部統制の不備に関する発見事項として「AI GIJIROKUは1ヶ月間の定額課金となっており、サービス期間に応じて売上を計上する必要があるが、期末監査時点では、入金または申込みがなされた月に計上されており、売上計上の業務フローおよび統制が整備されていませんでした。」と記載し、2021年6月頃、前記内部統制の整備状況の進捗が遅れていることを指摘した。このようにAW監査法人から指摘を受けていた2021年10月頃、⽇置友輔さんが当社に入社したところ、⽶倉千貴さんは、同月11日、日置友輔さんに対して、「販売店モデル誕生のフロー」と称するGoogle スライドのプレゼンテーションを共有したうえで、同月中旬、⽇置友輔さんと「日置さんサブスク2.0説明MTG」と題するWeb会議を実施した。その後、⽶倉千貴さんは、b氏およびa氏に対して、Slack上で、広告代理店とSPを使ったAI GIJIROKU販売スキームの全容について当社内ではそれを把握するメンバーを両氏のほかp氏に限定していたが⽇置友輔さんにも同Web会議においてその全容を述べたと伝えたうえ、同スキームに対して前向きな意見を出せる者以外は当該メンバーに加えないよう情報管理を行うことを指示した。なお、このような情報管理は投資家に対しても行われていた。具体的には、Series Dによる資本調達を控えた2021年12月頃、⽶倉千貴さんは、Slack上で、⽇置友輔さんから投資家に示す資料についての相談を受けた際、当該資料にA社とB社が密接な関係にあるという機密情報が含まれているから絶対に投資家に示してはならない旨指摘し、⽇置友輔さんもこれに同調していた。」との記載あり。
⑨調査報告書に、「⽶倉千貴さんおよび⽇置友輔さんは、株主などから、当社の広告宣伝費が高額であるとの指摘を受けており、これ以上広告宣伝費を増加させないことを課題としていた。このような状況において、⽶倉千貴さんは、当社の研究開発費が多い訳ではなく、当社の主力事業との関係で研究開発費を増加させても不自然ではないとの認識から、広告宣伝費の名目での支出を抑えるため、研究開発費などの名目で金銭を支払い、それらを広告宣伝費などに回して、売上を維持・増加させることを考えるに至り、遅くとも2022年4月下旬以降、当該考えをSlackにより⽇置友輔さん、b氏およびa氏と共有した。⽶倉千貴さんおよびb氏は、その頃、V社に対して研究開発費の支払名目で資金を支出し、V社を経由して当該資金のほとんど全てをW社に支払うことで、W社への売上代金を回収するスキームを検討していたと考えられる。そして、⽶倉千貴さん、⽇置友輔さん、b氏およびa氏は、当該V社を利用したスキームに加えて、他の協力会社にも研究開発費などの名目で金銭を支払い、その金銭を広告宣伝費などに充てることを計画し、その実現に向けて協議していたことが認められる。かかるスキームの実現に向けた研究開発費の支払先となる協力会社探しや、委託する業務内容およびその対価などに係る交渉はb氏が担当することとなり、b氏は、当該資金を協力会社からA社に資金移動させて同社に一時的にプールし(プール金については、A社において預り金勘定として仕訳されて管理されており、SP事務フローに基づいて支出されていたとのことである。)、当該プール資金をA社からSPに支払う形でSPへの売上代金を回収するというスキームを考え、協力会社の選定、研究開発費として支出する金額などにつき、⽶倉千貴さん、⽇置友輔さんおよびa氏と随時相談しつつ遂行した。」との記載あり。
⑩調査報告書に、「当社は、2022年10月4日付けコンサルティング契約に基づき、同年11月以降、X社に対して、前月分のアノテーション等業務の対価名目で1100万円を支払い、前記調整に沿って、X社が当該金額からアノテーション作業費および協力の対価を差し引いた残金を A社に支払い、A社が当該金額から手数料を差し引いた金額をプールして、SPへの支払などに充てられるスキームが開始された。その後、2023年2月分から、当社がX社に支払うアノテーション等業務の対価が2200万円に増額され、2025年1月分は3300万円、同年2月分は4400万、同年3月および4月分は3850万円と変遷した。なお、このように2025年1月分から毎月の支払額が変動したのは、⽇置友輔さんが、研究開発費が毎月定額になっていると投資家から見て不自然に映ることから、b氏に指示をしたことによるものであった。」との記載あり。
⑪調査報告書に、「2023年2月頃、⽶倉千貴さんは、Slackにおいて、⽇置友輔さんおよびb氏に対し、ダイレクトセールス用に数億円程度の広告予算を捻出する必要があると連絡し、その際、純粋な売上が増加すれば最もリスクの高いSPとの取引を中止できるようになる旨示唆した。b氏は、広告宣伝費の支出を増やすことができない状況で、SPによるAI GIJIROKUのアカウント購入のためにも研究開発費を増やしていかないと資金が回らなくなるとも認識していたため、⽶倉千貴さんおよび⽇置友輔さんと協力会社の選定や、(技術本部ではなく)事業部の研究開発として発注できるのかなどについて相談をしつつ、X社に加えて、研究開発費名目での支払先となる協力会社を探すこととなった。」との記載あり。
⑫調査報告書に、「⽶倉千貴さんは、2023年12月中旬、当社内のEC担当者からSPの仕組みをEC業務に絡めたい旨の提案があった際、当該EC担当者がSPのことを知っているはずがない旨Slack上に投稿したうえ、⽇置友輔さんを通じてb氏にSPに関するデータ共有の削除などを指示していた。また、⽶倉千貴さんは、2024年10月下旬、Slack上において、X社を通じて本件SPスキームに新たな会社を加えることを検討した際、b氏に対して、X社から提案を受けるよう指示したところ、b氏からX社が取引の全体像を把握していないのでそのような行動は相当危険である旨の報告を受けて、X社にその全体像を漏らしかねなかったことを危惧する発言をしていた。」との記載あり。
⑬調査報告書に、「本調査において、上場承認後上場日までの間に、主幹事証券会社AVに対して、⽇置友輔さんおよびa氏らによって、改ざんした資料を提出した事実が認められた。当該事象は、本件疑義自体に関するものではないものの、当社の取締役などが備えるべき誠実性の欠如を根拠づける事象であること、真正な資料が提出されていた場合または資料の改ざんが発覚していた場合には、当社の上場の可否に影響を与えていた可能性がある。」との記載あり。
⑭調査報告書に、「上場の可否に大きな影響を与えうる重大な事項の調査に関する主幹事証券会社AVからの資料要求に対して、当社が複数の改ざんした資料を提出したことが確認された。当該行為は、⽇置友輔さんやa氏らによってなされたものであり、当社取締役などが備えるべき誠実性の欠如を示すものであり、極めて不適切な行為である。」との記載あり。
⑮調査報告書に、「本件SPスキームの形成・調整については関係者における各関係者の関与の程度について供述は一致しておらず、また明確な関与を否定する者もいるが、⽶倉千貴さん、⽇置友輔さん、a氏、b氏といった当社経営幹部により本件SPスキームの形成・調整とその実行がなされてきたことは明らかである。さらに、かかる本件SPスキームについて、⽶倉千貴さんや⽇置友輔さんらはいずれもVCなどに対して適切にその実態を伝えることをせず、むしろ積極的に実態と異なる説明を行っている事実が認められる。また、本件SPスキームそのものについてではないとはいえ、上場直前に主幹事証券会社AVから求められた資料(これは主幹事証券会社AVを通じて、ひいてはJPXに対しても報告される内容となるものであり、そのことは当社関係者においても当然認識していた。)について、悪質な偽装工作なども実施している。このような事実に鑑みれば、当社が本件SP スキームを実行するに至ったのは、⽶倉千貴さんをはじめとする経営トップにおいて、上場企業の経営者が備えるべき誠実性が欠如していたことによるものであることは明らかである。」との記載あり。
⑯2025年7⽉30⽇開催の取締役会において、「⺠事再⽣⼿続開始の申⽴てを⾏うことを決議し、東京地⽅裁判所にその申⽴てを⾏い、同⽇、受理された。第三者委員会の調査の結果、不適切な会計処理があることが明らかになったことから、事業価値の毀損が進むとともに、財務状態の悪化が深刻となるおそれがあり、⾃⼒での再建が困難な状態に陥っているものと考えている。そこで、当社としては、このような状況を踏まえ、スポンサー⽀援による再⽣を⽬指すとともに、不適切な会計処理に起因して発⽣する可能性のある債務の公平かつ適切な対応を企図して、今般、再⽣⼿続開始の申⽴てに⾄った次第。負債総額約24億円(2025年6⽉30⽇現在)。今後は、東京地⽅裁判所および監督委員の監督の下、従前どおり事業を継続しつつ、事業を承継していただけるスポンサーを速やかに探索し、当該スポンサーへ事業を承継することで、当社事業の再建を図っていく。」と公表。
⑰2025年7⽉31⽇に、「2025年7月30日付で、東京証券取引所より、当社株式を整理銘柄に指定し、2025年8⽉30⽇付けで上場廃⽌とする旨の通知を受けた。2025年7⽉30⽇から2025年8⽉30⽇まで整理銘柄指定され、上場廃⽌⽇は2025年8⽉31⽇。」と公表。東京証券取引所の上場廃⽌の決定および整理銘柄の指定理由は、「オルツは、売上⾼の過⼤計上の可能性の調査を⽬的に設置した第三者委員会より受領した調査報告書を2025年7⽉28⽇に開⽰した。当該調査報告書によると、2021年12⽉期から2024年12⽉期までの売上⾼の⼤半(約8割から9割)が過⼤計上であったこと、同社の経営幹部が関与した2021年6⽉頃から2025年3⽉までの間、販売代理店に対して販売したAI GIJIROKUのライセンスについてアカウントの発⾏の実態を伴わない売上計上をしていたことなどが明らかになった。これにより、同社は、新規上場申請時において、新規上場申請書類の財務諸表等に当該虚偽の情報を記載し、上場承認を得ていたと認められる。また、新規上場申請書類に記載された虚偽の内容は、2021年12⽉期から2023年12⽉期までの売上⾼の⼤部分に係る極めて重要かつ巨額なものであったと認められる。これは、新規上場申請に係る宣誓書において宣誓した事項について重⼤な違反を⾏ったものと認められるため、同社株式の上場廃⽌を決定し、整理銘柄に指定することにした。」との内容。
⑱2025年7⽉31⽇開催の取締役会において、臨時株主総会の付議議案などについて決議。開催⽇時は2025年9月3日、付議議案は取締役3名(浅沼達平さん、保坂文哉さん、西村祥一さん)の選任。
⑲2025年8⽉6⽇に、「7⽉30⽇付で行った東京地⽅裁判所への⺠事再⽣⼿続開始の申⽴てについて、本⽇、同地⽅裁判所より、開始決定がなされた。」と公表。⺠事再⽣法による今後の予定は、再⽣債権の届出期限が令和7年9⽉3⽇、財産評定書・報告書・認否書の提出期限が令和7年10⽉1⽇、再⽣債権の⼀般調査期間が令和7年10⽉8⽇から令和7年10⽉15⽇まで、再⽣計画案の提出期限が令和7年10⽉28⽇。
⑳2025年8⽉29⽇に、株式の上場廃⽌および株式の取り扱いについて、「上場廃⽌後、当社株式は株式市場において売買することが出来なくなり、売却を希望される譲渡⼈と買受を希望される譲受⼈との間で売買する相対取引のみとなる。なお、当社は株券不発⾏会社であり、上場廃⽌後も引き続き株券の発⾏は予定していない。上場廃⽌後の株主様の各種⼿続きについて、証券保管振替機構による当社株式の取り扱いが廃⽌となり、これに伴い、各証券会社での取り扱いも出来なくなることから、原則として各種請求・届出書などへの実印による押印および印鑑証明書の添付により、株主の本⼈確認および株主本⼈からの意思表⽰の確認とする。なお、三井住友信託銀⾏と当社との間の株主名簿管理事務委託契約は、本年9⽉末をもって終了を予定している。そのため、10⽉以降の株主名簿の管理および名義書換、住所変更、証明書発⾏などの各種⼿続きについては、当社にて対応する。」と公表。
㉑2025年9⽉3⽇に、「本日開催の臨時株主総会において上程予定であった決議事項は、定⾜数を必要とする議案であるところ、議決権⾏使書の提出を含め出席株主の有する議決権の数が定⾜数を満たさなかった(議決権の3分の1(120,891個)以上の株主に出席または委任状を提出いただく必要があったが、出席または委任状を提出いただいた株主の有する議決権数は118,782個(32.751%))ため、本総会において決議に⾄らなかった。本⽇、後⽇本総会の継続会を開催し、継続会においてあらためて審議いただくことを決議した。」と公表。
⇒本臨時株主総会において、元社長で取締役の⽶倉千貴さんが体調不良で欠席されたとの報道があったものの、今回の不祥事の中心人物であり、説明責任から逃れているように見え、違和感あり。
㉒2025年9⽉22⽇に、臨時株主総会延会を9⽉29⽇に開催することを公表。本延会で議決権を⾏使することができる株主は、本総会において議決権を⾏使することができる株主と同⼀。
※株主総会は、延期または続行することができる。総会の「延期」とは、株主総会の成立後に議事に入らずに会日を後日に変更することをいい、総会の「続行」とは、株主総会が成立して議事に入った後に審議未了となり、後日に再開して議事を継続することをいう。法律上の用語ではないが、一般に、延期の決議に基づいて開催される株主総会は「延会」、続行の決議に基づいて開催される株主総会は「継続会」と呼ばれている。延会または継続会は、あくまで当初招集された株主総会と一体をなすものであり、あらためて招集決定や招集通知発送の手続を行う必要はない。また、審議の対象は当初の総会と同一のものに限られるので、新たに議題を追加することはできず、延会または継続会に出席することができる株主は当初の株主総会で議決権を行使することができた株主に限られる。同様に、当初の総会における委任状・議決権行使書や電磁的方法による議決権の行使も、延会または継続会に効力が及ぶとされている。
㉓社長の日置友輔さんは、34歳(1990年生まれ)と若い社長。取締役で前社長の米倉千貴さんは、48歳(1977年生まれ)。
㉔仕様に凝った見難いHPや、難しい数式などを用い要点が分かり難い決算説明資料に違和感。
㉕社外取締役を除く取締役2名の報酬等の総額は4,608万円。単純平均で取締役1人当たり2,304万円。
株主総会での個人メモ
①株主総会開始前に、報道陣約10名ほどが株主総会会場の建物入口において取材をされていた。株主総会終了後には、報道陣が建物内に入り、株主総会会場出口で取材をされていたのが印象的。
②本延会の開催通知の送付は無く、他社の株主総会とは運用が異なり、受付において、議決権行使書、本人確認資料(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)の提示が必要であった。
③取締役と監査役の席に名札が無かったのが気になった。
⇒不祥事から名前を表示したくない意図があったのかもしれないが、名札があった方が、会社の顔となる役員の方々の顔と名前が一致するので親切だと思う。
④株主総会冒頭に、社長の⽇置友輔さんから、売上過大の問題、上場廃止、民事再生手続きなどについてのお詫びがあった。
⑤本臨時株主総会の延会においては、定足数を満たしているとの説明あり。
⑥取締役で前社長の⽶倉千貴さんは、体調不良により欠席。
⇒⽶倉千貴さんにおいては、辞任する旨の申し出があり受理されているものの、新たに選任された取締役が就任するまでの間、引き続き取締役としての権利義務がある。今回の不祥事の中心人物であり、説明責任から逃れているように見え、違和感あり。
⑦質疑応答で、「取締役候補者3名について、浅沼達平さんは2024年7月から経営企画部部長であり、保坂文哉さんは2025年1月から執行役員であり、西村祥一さんは2017年11月からCTOに就任されている。それぞれ要職に就かれており、今回の不祥事をいつ知ったのか伺いたい。」との質問あり。「浅沼達平さん、西村祥一さんについては、本不祥事に関与が無いと調査報告書に記載されている。保坂文哉さんについては、営業部隊を率いており、一部のバーター取引について認識していたものの、本不祥事については認識していなかった。社員数が少ない会社であり、取締役候補者は限られる。」との説明。
⇒調査報告書において、浅沼達平さん、保坂文哉さん、西村祥一さんの不正への関与は記されていないとはいうものの、不祥事が行われていた期間に要職に就かれており、会社の規模(従業員数23名、連結でも75名)から考えても違和感あり。
⑧質疑応答で、「取締役の⽶倉千貴さんは体調不良で欠席とのことだが、具体的な容体は?今後、損害賠償請求などの対応もあると思うが、連絡が取れる状況にあるのか?」との質問あり。「⽶倉千貴さんの容体については把握していない。連絡はできている。」との回答。
⑨質疑応答で、「前回、定足数を満たせず流会となったが、今回は定足数を満たし臨時株主総会が成立した。どのような対応をして定足数を確保したのか?」との質問あり。「前回、定足数ギリギリで満たせなかった。行使をされていない株主に呼びかけを行った。」との説明。
⑩質疑応答で、「民事再生手続きとなったが、100%減資となる可能性は?」との質問あり。「いろいろな可能性を検討している。今時点、決まっていることは無い。具体的な事には言及できない。」との回答。
⑪質疑応答で、「民事再生手続きとなり、上場廃止にもなった。取締役候補者3名においては、何のメリットがあって取締役となるのか?」との質問あり。「取締役は3名確保しなければならない。限りあるメンバーの中で、一番良い形で進められるメンバーとしている。」との旨の説明。
⑫質疑応答で、「昨年末に7億6,000万円で買収したデジタルトランスフォーメーション(DX)支援などを手掛けるわさびとグリーンアンドデジタルパートナーズの2社について、年間1億円程度の利益が出る会社であるのに2億3,500万円で売却することとなった。価値の毀損とならないか、取締役候補者3名が来場されているのであれば、抱負と共に見解を伺いたい。」との質問あり。取締役候補者を回答者として指名することなく、社長の⽇置友輔さんから、「買収した価格を下回っているが、300~400社へ売却を打診し、最も高い価格を提示してきた会社へ売却することとなった。」との旨の回答。
⑬質疑応答で、「監査役3名(中野誠二さん、福島泰三さん、藤井雅樹さん)が今回の不祥事に関与した事実は無いのか?監査役自身の言葉で伺いたい。」との質問あり。監査役3名を回答者として指名することなく、社長の⽇置友輔さんから、「調査報告書において、監査役3名の関与した事実や、関与した証拠は無いとの内容であった。」との説明。
⇒中野誠二さんは、2014年に入社し子会社の取締役も務めたこともある常勤監査役。調査報告書において不正への関与は記されていないとはいうものの、監査役の任務を果たしていたのであれば、会社の規模(従業員数23名、連結でも75名)から考えても違和感あり。
⑭質疑応答で、「再⽣計画案の作成において、社長の⽇置友輔さんは関与しているのか?もし関与しているのであれば、不祥事の当事者であり、抜本的な改革にならないのではないか?」との旨の質問あり。「少なからず作成に関わっているが、メインは新しい取締役候補者と監査役で作成している。主にスポンサー探しに関わっている。」との旨の回答。
⑮質疑応答で、「社長の⽇置友輔さんから見て、再生計画案の手応えは?抜本的な改革となっているのか?印象を伺いたい。」との質問あり。「不正により全部ダメだと思われてしまったが、技術基盤においては良いものがある会社。だからこそ価値がついている。もともとあった良いものに尽力する。ガバナンスの改革としては、取締役の入替を行う。細かい点については作成中。新しいメンバーでまとめて欲しい。」との説明。
⑯質疑応答で、「10月1日に裁判所が許可すれば、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援などを手掛けるわさびとグリーンアンドデジタルパートナーズの2社の譲渡が認められる。譲渡後の残存する事業価値をどう見ているのか?負債総額約24億円、再生債権の届け出の総額と認否について、状況を教えて欲しい。」との質問あり。「スポンサー候補を交えながら協議中。現時点、数字で出すのは難しい。認否についても1件1件審議中。債務超過を回避するのは難しいと考えている。」との回答。
⑰議案の採決方法は拍手での採決。
⇒議決権の過半数を保有する大株主もいない状況で、出席者により保有している議決権数も違うので、デジタル時代に会場の拍手の多数で賛否を決めるのでは基準が曖昧に感じる。投票方式を採用したりして、その場で数字で示したほうが株主総会に出席している株主から見て納得感がある。
株主総会を終えて感じたこと
株主総会時点、株式は未保有ですが、今回、実際に社長や取締役を間近に見てその振る舞いを確認できたこと、会社の雰囲気を感じられたことが株主総会に参加した大きなメリットでした。
質疑応答では、多くの質問が出ていましたが、社長の⽇置友輔さんが不祥事の当事者であるものの、取り乱すことも無く、丁寧に淡々と回答対応されていたのが印象的でした。なお、一部のコメントからは、マスコミの報道に対して被害者意識を持っていそうな様子も見受けられました。
取締役で前社長の⽶倉千貴さんは、体調不良により欠席されていましたが、⽶倉千貴さんにおいては、辞任する旨の申し出があり受理されているものの、新たに選任された取締役が就任するまでの間、引き続き取締役としての権利義務があります。今回の不祥事の中心人物であり、説明責任から逃れているように見え、違和感を感じました。
なお、上場から上場廃止までの株価(終値)の主な推移は下記のとおりです。
2024年10月11日 585円:東証グロース市場へ上場(公募価格540円、初値570円)
2024年12月2日 783円:場中に最高値823円を記録
2025年2月14日 589円:2024年12月期決算短信・決算説明資料公表
2025年2月17日 657円:翌稼働日
2025年3月25日 540円:第11期定時株主総会前日
2025年3月26日 534円:第11期定時株主総会
2025年4月25日 417円:第三者委員会の設置、2025年12⽉期第1四半期決算発表を延期を公表
2025年4月28日 337円:翌稼働日(ストップ安、寄り付きから売買成立せず、引けで比例配分)
2025年4月30日 257円:翌稼働日(ストップ安、寄り付きから売買成立せず、引けで比例配分)
2025年5月1日 113円:翌稼働日(安値105円、高値140円)
2025年5月2日 138円:翌稼働日(安値111円、高値152円)
2025年5月7日 125円:翌稼働日(安値125円、高値150円)
2025年6月4日 101円:朝⽇新聞朝刊の報道前日
2025年6月5日 99円:朝⽇新聞朝刊に循環取引による粉飾(売上7割⽔増し)疑惑の報道
2025年7月25日 90円:調査報告書受領(連結財務諸表への影響額(売上⾼の⼤半、約8割から9割が過⼤計上)公表)
2025年7月28日 60円:監理銘柄(審査中)に指定、代表取締役の異動公表(ストップ安、安値60円、高値70円)
2025年7月29日 51円:調査報告書公表
2025年7月30日 54円:東京地⽅裁判所に⺠事再⽣⼿続開始の申⽴てを⾏い同⽇受理
2025年7月31日 24円:上場廃⽌決定、整理銘柄へ指定(ストップ安、安値24円、高値30円)
2025年8月1日 22円:翌稼働日
2025年8月14日 12円:2025年12⽉期半期報告書の提出期限延⻑申請・承認
2025年8月15日 10円:翌稼働日
2025年8月25日 11円:最終取引日4日前(高値19円、安値11円)
2025年8月26日 8円:最終取引日3日前(高値11円、安値7円)
2025年8月27日 6円:最終取引日2日前(高値8円、安値6円)
2025年8月28日 5円:最終取引日前日(高値7円、安値5円)
2025年8月29日 5円:上場廃止前最終取引日(高値6円、安値4円)
2025年8⽉31⽇:上場廃止
オルツは、2024年10月11日の東証グロース市場への上場後、1年も経たずに不祥事から民事再生法の適用を申請し、上場廃止となりました。今までの同様なケースから考えると、100%減資となる可能性が高いように思え、上場廃止前最終取引日の終値が5円であった点に違和感を感じました。なお、社長の⽇置友輔さんから、債務超過を回避するのは難しいとの説明がありました。
今回の不正会計により、実態の見えづらいAI関連スタートアップへの信頼低下が懸念されます。オルツはもちろん、不正を見抜けなかった主幹事の大和証券、上場を認めた東京証券取引所、監査を担っていたシドーの責任や今後の対応(どう改善をはかっていくのか)も気になります。
今回のケースでは、「株主などから、当社の広告宣伝費が高額であるとの指摘を受けており」との記載もあり、同じ投資家として、売上高とほぼ近いレベルで計上されている「広告宣伝費」の数字に違和感を持つなど、損益計算書や貸借対照表に目を向け深堀する大切さについて学びとなりました。
株主総会では違和感をいくつか感じましたが、今後、同様なケースがあった際の参考にすると共に、最終的な株式の扱い(100%減資となるのか?)についても注視します。
