秋田銀行 第122期定時株主総会
日時:2025年6月25日(水) 10:00-10:55
場所:秋田銀行本店(秋田駅よりバス7分+徒歩3分)
出席株主数:約60名
お土産:無し
企業概要
秋田銀行(8343)
HP:秋田銀行
①秋田県を主に、本店ほか支店、出張所において、預金業務および貸出業務に加え、有価証券投資業務、内国為替業務、外国為替業務、公共債・投資信託・保険商品の窓口販売業務などを行う「銀行業」(経常収益構成比87%)、リース業などを行う「リース業」(経常収益構成比11%)、地域活性化支援業務・経営コンサルティング業務、地域商社業務、ファンドの組成・運営業務、個人ローン信用保証業務、クレジットサービス業務などを行う「その他」(経常収益構成比2%)を運営。
②鶏肉製品の生産販売などを手掛ける十文字チキンカンパニーが、第10位の株主として、20万株、1.1%を保有。
株式情報
時価総額:539億円(2025年6月24日時点)
経常利益:91.2億円(2025年3月期実績)⇒98.0億円(2026年3月期予想)
株価:2,980円(2025年6月24日時点)
1株純資産:8,828円(2025年3月末時点)、PBR:0.33倍
1株当期純利益:366円(2026年3月期予想)、PER:8.14倍
1株配当:150円(2026年3月期予想)、配当性向:40%
配当利回り:5.0%
株主数:11,292名
会計基準:日本会計基準
株主総会前の事前情報
①国内経済は、自然災害などの影響もあり、一部に遅れがみられたものの、景気は緩やかに回復した。年度前半は、物価高で消費意欲が減退するなか、賃上げや定額減税の実施による所得増加により個人消費は緩やかに増加した。年度後半は、生鮮食品や米価などの高騰により個人消費は伸び悩んだが、人手不足を背景としたデジタル化・省力化投資などの設備投資が緩やかに増加した。また、円安の影響を受け、訪日外国人客数がコロナ禍前を上回り、インバウンド需要などのサービス輸出が大幅に増加し、輸出も堅調に推移した。この間、人手不足を背景に賃金は増加傾向にあった。当行の中心的な営業基盤である秋田県の県内経済は、物価高や原材料高の影響を受け、景気は全体として回復に遅れが見られた。産業別の動向では、主力の電子部品・デバイスはスマートフォン向けを中心に増加傾向で推移したが、機械金属は海外需要の低迷から大きく落ち込んだ。需要面では、公共工事が増加基調で推移したが、住宅着工は弱い動きが続いた。また、個人消費は、自動車販売が一部車種の生産・出荷の遅れの影響などから低調に推移したが、大型小売店販売は物価高の中でも底固く推移するなど、年度末にかけて回復の兆しがみられた。
②金融面では、日銀による政策金利引き上げにより、短期金利は0.5%程度まで上昇した。新発10年物国債利回りは、7月に1.1%台まで上昇したが、8月には米国景気後退懸念などに端を発した海外金利の急低下を受けて一時0.7%台まで低下した。その後、海外金利が再び上昇したことや日銀の追加利上げ観測の高まりを受け、3月に1.5%台まで上昇した。日経平均株価は、企業業績の拡大期待に加え、米ハイテク株の上昇を背景とした半導体関連銘柄が上昇したことなどから、7月に一時42,000円を突破し史上最高値を更新した。8月には金融市場の混乱によるリスク回避の動きから31,000円台まで急落する場面もあったが、その後持ち直し、36,000円~40,000円のレンジ内で推移した。年度末には米関税政策に対する不透明感からリスク回避の動きが強まり、35,000円台まで下落した。為替相場は米利下げ観測の後退や投機的な円売りポジションの積み上がりにより7月に38年ぶりの円安水準となる161円台を付けたが、本邦通貨当局による円買いドル売り介入実施や米国景気後退懸念から9月に140円程度まで円高が進んだ。その後は150円台後半まで戻す展開となったが、日銀が利上げを容認する姿勢をみせたことや、米国の円安けん制などにより年度末には150円まで上昇した。
③以上のような経営環境のもと、当行では、2030年を展望する秋田銀行グループVISION『価値をつくる。未来へつなぐ。』の実現に向けた3つの基本方針に基づき、地域のお客さまが抱える課題の解決に引き続き積極的に取り組み、その活動を通じて地域経済の成長に貢献するとともに、持続可能なビジネスモデルの構築を進めて各種施策に取り組んできた結果、当連結会計年度の経常収益は、資金運用収益の増加と株式等売却益の増加により前年比94億80百万円増加し522億14百万円となった。また、経常費用は、国債等債券売却損・償還損の増加により69億56百万円増加し、430億92百万円となった。この結果、経常利益は25億24百万円増益の91億21百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は11億21百万円増益の56億62百万円となった。
④セグメント別の業績は、銀行業務では、経常収益は前年比93億16百万円増収の464億円、セグメント利益は29億29百万円増加の93億72百万円となった。リース業務では、経常収益は4億34百万円増収の58億10百万円、セグメント利益は1億33百万円減少の1億21百万円となった。
⑤総預金は、前年比121億円増の31,957億円。貸出金は、前年比668億円増の20,641億円。その他有価証券の評価損益は△11,596百万円。金融再生法開示債権は57,360百万円。総資金利鞘は0.18%。貸倒引当金は15,302百万円。
⑥2026年3月期の連結経常利益は、2025年3月期比6億円増加の98億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同8億円増加の65億円を見込んでいる。また、銀行単体の経常利益は同4億円増加の98億円、当期純利益は同4億円増加の65億円を見込んでいる。
⑦2025年3月27日に、中期経営計画を公表。2028年3月期に当期純利益(連結)80億円以上。中長期VISIONは、2031年3月期に、当期純利益(連結)100億円以上。中期経営計画策定時の想定は、政策金利について2025年度中に2回(9月、3月)の利上げ、年度内に1.000%。
中期経営計画策定時の想定シナリオに対し、足元のダウンサイドリスクを踏まえ、2026年3月期資金利益について試算。政策金利について、2025年度中に1回(12月)の利上げにより、0.750%とした場合、資金利益への影響額は▲1億円弱程度。
⑧PBRについては、マイナス金利導入前後のPER水準13倍程度と同水準の実現、ROE目標達成により、2028年3月期に、PBR0.6倍程度を想定。PBR1倍以上を目指し継続的に取組む。
⑨2025年5月12日開催の取締役会において、株主還元方針を変更することを決議。銀行の公共性にかんがみ、健全経営と円滑な資金供給に必要な内部留保の充実に努め、かつ、安定的な配当を維持することを配当政策の基本方針とし、この基本方針のもと、配当性向は親会社株主に帰属する当期純利益の40%以上を目標とし、利益成長を通じた一株当たり配当金の増加を目指していく。また、自己株式の取得は、資本の十分性の確保を前提として、資本効率の改善効果や中長期的な成長に向けた投資機会、市場環境などを踏まえたうえ機動的に実施する。
⑩取締役候補者9名中、70歳以上の候補者は榊純一さん(1954年生まれ、70歳)の1名。
⇒役員定年制(一般的には65歳~70歳)を設定して、未来のために次世代育成を進めたほうがよいと思う。
⑪監査等委員である取締役と社外取締役を除く取締役5名の報酬等の総額は14,700万円。単純平均で取締役1人当たり2,940万円。
株主総会での個人メモ
①株主総会は、秋田銀行本店内の会議室での開催。
②取締役の田中理沙さんは、所用のため欠席されていた。
③質疑応答で、「あきぎんキャピタルパートナーズのサポート件数は?」との質問あり。「8件で3億円。順調に推移している。」との回答。
④質疑応答で、「人手不足対応のキャリピタAKITAのサポート件数は?」との質問あり。「453社が登録しており、求職数が1,534名。実績は63名。まだまだ物足りない。」との説明。
⑤質疑応答で、「M&A支援事業について、実績件数は?」との質問あり。「M&Aは247件。起業・創業は77件。順調に推移している。」との回答。
⑥質疑応答で、「障碍者の雇用状況は?」との質問あり。「法定雇用数を上回っている。人事部に配置している。」との旨の説明。
⑦質疑応答で、「今期の業績予想について、前提としている金利シナリオは?」との質問あり。「0.5%から1.0%へ2回の利上げを前提して計画を立てた。その後、年内1回の利上げの可能性が高くなったと思っているが、業績予想への利益の影響は1億円程度と見ている。年内1回の利上げを織り込んでいる。」との旨の回答。
⇒説明の内容に矛盾を感じた。当初、業績予想を作成した時点ではの2回の利上げを前提としていたが、想定が崩れ、最新の状況から1回の利上げと見ているものの、業績への影響は軽微との旨と理解した。
⑧質疑応答で、「群馬県の群馬銀行と新潟県の第四北越銀行の県をまたぐトップ行同士の経営統合の発表があった。地銀再編についての方針は?」との質問あり。「地銀再編について金融庁が地銀をヒアリングしているとの話があるが、当行は金融庁からヒアリングを受けていない。再編への具体的な考えは無いが、手段の一つとして検討を進める可能性はある。」との説明。
⑨質疑応答で、「多くの地銀で地域の名産品を株主優待としている。株主還元とともに地域貢献にもなる。株主優待の新設についての考えは?」との質問あり。「安定的な配当と企業価値向上で報いたい。ニーズがあるのは承知している。」との回答。
⑩議案の採決方法は挙手での採決。
⇒議決権の過半数を保有する大株主もいない状況で、出席者により保有している議決権数も違うので、デジタル時代に会場の挙手の多数で賛否を決めるのでは基準が曖昧に感じる。投票方式を採用したりして、その場で数字で示したほうが株主総会に出席している株主から見て納得感がある。
株主総会を終えて感じたこと
株主総会時点、株式は未保有ですが、今回、実際に頭取や取締役を間近に見てその振る舞いを確認できたこと、会社の雰囲気を感じられたことが株主総会に参加した大きなメリットでした。特に今回、秋田銀行本店内にある会議室での開催でしたので、良い機会となりました。
質疑応答では、頭取の芦田晃輔さんの真面目で硬そうな雰囲気が印象に残りました。
2023年3月31日に、東京証券取引所が「PBR1倍割れの企業に改善要請」を実施しましたが、秋田銀行は、1株当たり純資産8,828円に対し、株価2,980円(2025年6月24日時点)、PBR0.33倍と低迷しており、PBR1倍達成に向けた施策が求められます。
三菱総合研究所が公表した「2022年から2030年にかけての貸し出しマーケット」の推移では、秋田県は10%以上の減少が見込まれており、今後の地銀再編の動向が気になります。
また、配当利回りは魅力的であるものの、その他有価証券の評価損益が△115億万円と多く気になります。国内政策金利の上昇による業績向上を期待しつつ、再投資も検討します。
