Heartseed 第9回定時株主総会
日時:2025年1月24日(金) 13:00-14:55
場所:シーバンスS館(日の出駅徒歩5分)
出席株主数:約60人
お土産:フウセンカズラの種、ミネラルウォーターの配布あり
企業情報
Heartseed(219A)
HP:Heartseed(ハートシード)株式会社 | Heartseed Inc. - iPS細胞による心臓の再生医療
①心不全に対して、iPS細胞から心臓の細胞を作製して心臓組織に移植する治療方法(iPS細胞を用いた心筋再生医療)を開発。
②筆頭株主は、社長の福田惠一さんで、320万株、14.4%を保有。
参議院議員で取締役の古川俊治さんが、第5位の株主として、112万株、5.0%を保有。
取締役の河西佑太郎さんが、第6位の株主として、80万株、3.6%を保有。
オムロン(6645)の子会社で健康保険組合などの医療データを匿名加工し製薬・保険会社等へ提供するJMDC(4483)が、第10位の株主として、46万株、2.1%を保有。
③使用人数は、39名と少人数体制。
株式情報
時価総額:628億円(2025年1月23日時点)
売上高:8.7億円(2024年10月期実績)⇒23.9億円(2025年12月期予想、決算期変更)
株価:2,826円(2025年1月23日時点)
1株純資産:297円(2024年10月末時点)、PBR:9.51倍
1株当期純利益:▲43.1円(2025年12月期予想、決算期変更)、PER:赤字
1株配当:無配(2025年12月期予想)、配当性向:無配
配当利回り:無配
株主数:6,859名
会計基準:日本会計基準
株主総会前の事前情報
①日本の再生医療業界においては、2014年に施行された改正薬機法によって、再生医療への「条件及び期限付承認制度」が導入され、また承認審査期間の短縮や当局との事前相談に関する優先的支援などを提供する「先駆的医薬品等指定制度」が2019年に法制化されるなど、優れた再生医療等製品を逸早く実用化できる仕組みが整っている。
②当事業年度における事業の概況としては、虚血性心疾患に伴う心不全患者を対象とする他家iPS細胞由来心筋球の開胸投与による治療プログラム(HS-001)をリードパイプラインとして、開発を継続している。実施中の冠動脈バイパス手術と併用する第I/II相臨床試験(LAPiS試験)において、安全性評価委員会による高用量群1例目(治験全体の6例目)の安全性に関するレビューが10月1日付で完了し、10月末時点で8例目まで投与されている。一方、グローバル大手製薬企業であるノボ ノルディスク・エーエスとの全世界を対象とする独占的技術提携・ライセンス契約のもと、同社との開発の進捗に伴い、第1四半期および第4四半期にマイルストン収入を計上している。また、患者にとってより負荷の低いカテーテルを用いた投与方法の開発について計画を策定し、現在は試作品における確認・検証などを進めている。このような状況のもと、当事業年度の経営成績は、 売上高873,610千円(前年比153.4%増)、営業損失は1,038,802千円(前年は営業損失1,459,614千円)、経常損失は818,581千円(前年は経常損失1,456,584千円)、当期純損失は812,725千円(前年は純損失1,473,500千円)となった。
③国際基準に事業年度を合わせることで、事業運営の効率化を図り、適時・適切な経営情報の開示を目的として、事業年度を毎年1月1日から12月31日までに変更する。
④2025年12月期の業績予想については、売上については、開発スケジュールに基づき達成可能と見込むマイルストン収入をもとに2,394百円を見込む。販管費及び一般管理費は研究開発費が大半を占めており、主に心筋細胞製造にかかる試薬・資材費用および第I/II相試験費用(LAPiS試験)およびHS-005(他家iPS細胞由来心筋球のカテーテル投与による治療プログラム)の試験に関する費用。営業損失は1,010百万円、経常損失は958百万円、当期純損失は959百万円を予想。
※心筋球:心筋細胞(心臓の筋肉の細胞)を約1,000個集めたもの
⑤2021年5月に、デンマークに本社を置くグローバル大手製薬企業であるノボノルディスク エー・エスと、全世界を対象とする独占的技術提携・ライセンス契約を締結した。本契約は、HS-001やHS-005を含む他家iPS細胞由来心筋球(細胞株、投与方法、適応症は問わない)の、日本以外の全世界における臨床開発・製造・販売権をノボノルディスク エー・エスへと付与する一方、国内では当社が製造販売権を保持して、両者共同で商業化(co-commercialize)し、日本国内事業に関する収益を50:50にてプロフィットシェアする事業提携スキーム。これにより当社の事業収益は、日本国内で薬事承認後に取得する収益に加えて、導出に係る契約一時金(2021年に受領済)、日本および海外の開発進捗に応じたマイルストン収入(一部受領済)、並びに海外での製品上市後のロイヤルティ収入および販売マイルストン収入から構成される。契約一時金および各種マイルストン収入は、最大で合計598百万米ドルとなり、海外で販売開始後は、海外年間純売上高に応じて漸増する1桁後半~2桁前半パーセントのロイヤルティ収入も受領する。
⑥治験製品の製造をCDMOに委託する体制であり、固定資産は小さく、有利子負債もない。
⑦HS-001は、他家iPS細胞由来心筋球を開胸手術(冠動脈バイパス手術と同時))で投与。対象疾患はIHD(虚血性心疾患を原疾患とする心不全)。Phase1/2実施中。試験データを以て承認申請。
⑧HS-005は、他家iPS細胞由来心筋球をカテーテルで投与。対象疾患はIHD(虚血性心疾患を原疾患とする心不全)、DCM(拡張型心筋症を原疾患とする心不全)。2025年治験届提出目標。ノボ ノルディスクは、2023年当局相談開始済み。
⑨HS-040は、自家iPS細胞由来心筋球を開胸手術 / カテーテルで投与。AMEDの補助金を得て開発加速。
⑩ノボ ノルディスクからのマイルストン収入について、ノボ ノルディスクとの取り決めがあり、マイルストンの個別の項目などの詳細については開示できない。基本的には、臨床開発を含めた研究開発において進捗がある時や、薬事や販売に関する進捗がある場合などにおいて、マイルストン収入が発生する契約の建付けとなっている。今期においては、HS-001におけるLAPiS試験の組入れの完了や、カテーテル投与であるHS-005において、治験開始に向けた準備が進むことなどを主要な目標とする中、これらに関連したマイルストン収入を想定している。
⑪黒字転換については、HS-001に関して、2027年内の販売開始を想定している。市場における浸透スピードによるが、上市後に極力早い黒字転換を実現できるよう努めていく。
⑫HS-005は、市場の多様なニーズに応えられるよう、ノボ ノルディスクや新規パートナーとのカテーテル共同開発を進める。グローバルで展開するにあたっては、求められるカテーテルに地域差などがある可能性もある。そうした中、開発段階において選択肢を増やしておくことで成功の確度が高まると考えている。新規パートナーに関しては、然るべきタイミングでお知らせする。
⑬社外取締役を除く取締役6名の報酬等の総額は11,924万円。単純平均で取締役1人当たり1,987万円。使用人兼務取締役の使用人分給与は含まず。
使用人兼務取締役の使用人給与や、子会社などからの報酬も含めた金額が提示された方が、株主から見て実態が分かりやすいと思う。
株主総会での個人メモ
①株主総会後、経営説明会も開催。
②株主総会冒頭に、全取締役と監査役の紹介があった。
③質疑応答で、「競合他社の状況は?」との質問あり。「心筋細胞を移植する方法については、米国2社、中国1社。米国の1社は撤退した。中国の1社は方法が異なる。パッチ療法については、上手く生着できず、生着期間が1~2ヵ月と短いとの論文もある。」との旨の説明。
④質疑応答で、「福田惠一さんは、社長であり、大株主であり、主たる研究者でもある。会社としてバランスが取れているのか?社外取締役の意見を伺いたい。」との質問あり。社外取締役で参議院議員の古川俊治さんから、「組織としてCFOなど専門性を持った人材で補い、取締役会では議論を尽くしている。ガバナンスは効いている。」との回答。社外取締役の出口恭子さんから、「医療業界で経営を担ってきた観点から、取締役会で議論を尽くしている。」との回答。
⑤質疑応答で、「取締役の金子健彦さんがサンバイオから入社、取締役の平野達義さんがUMNファーマから入社した経緯と入社後の役割は?」との質問あり。金子健彦さんから、「日本の会社のシーズを世界の患者に広めていきたい。社長の福田惠一さんと同じ慶応大学の出身。研究開発と製造を担当している。」との説明。平野達義さんから、「UMNファーマの社長を担っていたが、塩野義製薬に買収された。上場企業の経営が分かる人材が必要だと思った。ファイナンス以外の管理部門を担当している。」との説明。
⑥質疑応答で、「マーケット規模は?」との質問あり。「虚血性心疾患については、約6,500万人。半分が心筋細胞が減ってしまい、そのうち重症は約700万人。拡張型心筋症については、日本で約3万人。薬価があるので金額で言うのは難しい。」との回答。
⑦質疑応答で、「日本研究開発医療大賞スタートアップ賞を受賞したとあるが、受賞に伴う補助金はあるのか?」との質問あり。「補助金は無い。」との説明。
⑧質疑応答で、「今後の株式市場からの資金調達の予定は?」との質問あり。「直ぐの予定は無い。」との回答。
⑨質疑応答で、「国内においては、少子高齢化で社会保険制度の構造的な問題から薬価が抑えられ、また、十分な利益を得られないうちにジェネリックが出てきてしまい、厳しい事業環境だと他のバイオベンチャーから聞く。このような事業環境の中でどのように運営していくのか?」との旨の質問あり。「対象となる心疾患については入退院を繰り返すケースが多く、本治療でそれを防ぐことができる。また、心臓移植にも多額の費用が掛かるが、心臓移植をしないで済むようにもなる。効果を踏まえ十分な薬価を付けてもらいたい。世界にも出ていく。」との説明。
⑩質疑応答で、「心筋球の寿命は?」との質問あり。「1年間観察した結果、機能していることを確認している。その後も生着が続くものと考えている。」との回答。
⑪質疑応答で、「HS-001はいつから治療に使用開始される予定なのか?」との質問あり。「LAPiS試験の10例目は2024年12月の予定であったが、治験施設や患者の事情などもあり、1月にずれ込んだ。その後、2026年2月くらいまで1年間の観察期間がある。データ整理を2026年に行い、申請後11ヶ月程度で承認されるかどうか。2027年の販売開始を見込んでいる。」との説明。
⑫質疑応答で、「ノボ ノルディスクからのマイルストン収入について、詳細を教えて欲しい。」との質問あり。「開発、承認、売上段階でのマイルストン契約がある。総額約900億円。カテーテル治療の山を越えるたびに収入がある見込み。資金が尽きることの無いよう、安定した収入が得られるようにマイルストン収入の設定を工夫している。」との回答。
⑬質疑応答で、「製造、運搬は自社で行うのか?」との質問あり。「製造については、CDMOへ委託するので当面は自社工場は無い。輸送についても、提携会社へ委託する。」との説明。
⑭議案の採決方法は拍手での採決。議決権の過半数を保有する大株主もいない状況で、出席者により保有している議決権数も違うので、デジタル時代に会場の拍手の多数で賛否を決めるのでは基準が曖昧に感じる。投票方式を採用したりして、その場で数字で示したほうが株主総会に出席している株主から見て納得感がある。
株主総会を終えて感じたこと
株主総会時点、株式は未保有ですが、今回、実際に社長や取締役を間近に見てその振る舞いを確認できたこと、会社の雰囲気を感じられたことが株主総会に参加した大きなメリットでした。特に今回、Heartseed本社のあるシーバンスS館での開催でしたので、良い機会となりました。
上場後、初めての株主総会でしたが、質疑応答では、社長の福田惠一さんを中心に丁寧に回答対応されていました。
質疑応答で質問が出ていましたが、事業等のリスクに、「社長の福田惠一さんが研究開発活動の遂行において重要な役割を担っており、何らかの理由により業務遂行が困難になった場合、当社の経営成績及び事業展開に重大な影響を及ぼす可能性がある」との旨の記載があります。福田惠一さんは68歳(1957年)でもあり、後継者の育成状況も気になります。また、良くも悪くも個性が強そうな印象を受けました。
会社運営に支障が出ないようノボ ノルディスクからのマイルストン収入について設定を工夫されているとの説明がありましたが、一方で、質疑応答で指摘があった通り、国内においては販売段階で薬価が抑えられてしまわないか心配です。
HS-001の販売開始は早くて2027年の予定ですが、治験に参加する施設が増えているとの説明もあり、心不全治療への大きな貢献を期待しています。再投資も検討します。