エスライングループ本社の株主総会に出席しました【2024年6月28日】

株主総会
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エスライングループ本社 第85期定時株主総会

日時:2024年6月28日(金) 10:00-10:45

場所:ホテルグランヴェール岐山(岐阜駅徒歩20分)

出席株主数:約40名

お土産:無し、株主総会開始までホットコーヒーやアイスコーヒーなどの提供あり

 

企業情報

エスライングループ本社(9078)

HP:株式会社エスライングループ本社 (sline.co.jp)

①貨物自動車運送事業、倉庫業、自動車整備事業、情報処理サービス業、損害保険代理業などをおこなう「物流関連事業」(売上構成比98%)を中心に、不動産賃貸事業をおこなう「不動産関連事業」(売上構成比1%)、旅客自動車運送事業、売電事業をおこなう「その他」(売上構成比1%)を運営。

筆頭株主は、社長の山口嘉彦さんの資産管理会社の美美興産で、131万株、11.9%を保有。
福山通運(9075)の連結子会社の東京福山通運が、第7位の株主として、36万株、3.2%を保有。
土木請負などを手掛ける市川工務店が、第9位の株主として、32万株、2.9%を保有。

 

株式情報

時価総額:166億円(2024年6月27日時点)

売上高:496億円(2024年3月期実績)⇒非公表(2025年3月期予想)

株価:1,500円(2024年6月27日時点)

1株純資産:2,563円(2024年3月末時点)、PBR:0.58倍

1株当期純利益:非公表(2025年3月期予想)、PER:非公表

1株配当:非公表(2025年3月期予想)、配当性向:非公表

配当利回り:非公表

株主数:9,756名

会計基準:日本会計基準

 

株主総会での個人メモ

①株主総会冒頭に、社長の山口嘉彦さんから、MBOの説明と、議決権の保有が75.3%となりMBOが成立した旨のお礼の言葉があった。

物流関連業界においては、経済活動やインバウンド需要の回復により、貨物輸送物量は増加するものと期待していたが、あらゆる商品価格の値上がりが続くことで、消費活動に力強さが感じられず、低調に推移した。また、長引く原油価格の高騰により軽油単価や光熱費などの高値が続いていることや、ドライバー不足や2024年問題への対応など、労働環境の改善課題も多く、当社グループを取り巻く経営環境は非常に厳しい状況が続いている。このような環境のもとで、2年目となる中期経営計画(テーマ:「ありがとう創造計画」)の経営目標達成と企業価値の向上に向けて、グループ一丸となって取り組んできた。基本方針のひとつである「推進体制、基盤の確立」に関しては、昨年7月にホールディングス機能の推進と強化を図る目的で商号を「エスライングループ本社」に変更した。また、同じく基本方針のひとつである「規模の拡大」に関しては、昨年10月に、関東エリアで家電製品の配送や設置工事業務をおこなっているエムアンドエスコーポレーションを完全子会社化した。この結果、当連結会計年度の業績は、営業収益496億87百万円(前年比3.4%増)、営業利益7億58百万円(前年比8.8%減)、経常利益8億86百万円(前年比14.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億35百万円(前年比42.2%減)となった。

③物流関連事業は、トラックによる企業間輸送を主とする輸送サービス部門では、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことにより行動制限が緩和され、経済活動は回復に向かうと期待していたが、衣料品や食料品、日用雑貨品などの生活関連商品の価格値上げが続いていることによる購買意欲の低下や、ネット通販などのEC物流が増加するなど、特積み貨物の輸送物量は年間を通して前年割れの状況が続き減少した。特積み貨物以外の輸送領域として、港湾地区での輸入貨物を取り扱うエスラインギフ「阪神港湾センター」や「京浜港湾センター」、さらには中部地区の地域貸切を取り扱うエスラインギフ「中部貸切業務センター」での貸切業務の拡大への取り組みに加え、この2月に九州地区の地域貸切を取り扱うエスラインギフ「九州貸切業務センター」を開設するなど、貸切収入は増加したが、特積み収入の減少を補うまでには至らなかった。このように貨物輸送物量が伸び悩むなかで、人件費や燃料費をはじめとする固定的な輸送原価の上昇分を補うために、燃料サーチャージの収受や運賃値上げ交渉などの営業活動を継続して取り組んだ結果、運賃値上げの効果は期の後半に表れてきた。また、協力会社と幹線便の共同輸送や、昨年7月からエスラインヒダが富山県下において、ラニイ福井貨物と共同集配業務を開始するなど、輸配送業務の効率化と生産性の向上に取り組んできたが、輸送サービス部門は減収となった。
商品保管や流通加工を行う物流サービス部門では、飲料関連商品の取扱物量は減少したが、スリーエス物流の第三物流センターをはじめとした過年度に新築した自社保管施設による増床効果に加え、交通アクセスが良い場所に保管施設と輸送拠点を持っている利便性を強みとして、食品関連(主に菓子類メーカー)の取引先からの商品保管および配送業務の取扱物量が増加したことにより、物流サービス部門は増収となった。
家電配送・設置業務や大型貨物の個人宅配を行うホームサービス部門では、家電量販店の販売不振が続いているなかで、お客様満足度を高める取り組みを継続したことにより新規の取引先の開拓が進んだことや、既存荷主の配送エリアの拡大に加え、一昨年9月には東北地区、昨年10月には関東地区をカバーする家電配送および設置工事業務をおこなう会社を完全子会社化するなどの取り組みにより、大幅な増収となった。引越しサービスについては、エスラインギフ「引越事業センター」を中心に、オフィス引越しを積極的に取り組んだことにより、ホームサービス部門全体では増収となった。経費面では、軽油価格の高値が続いていることや、労働力不足による傭車費を中心とした外注費の増加、社員の待遇改善や、求人費・社員教育費などの人件費の増加、さらには、新施設の減価償却費や施設使用料などの経費も増加するなかで、生産性の向上や作業効率の改善に努めるとともに、あらゆる経費の削減に取り組んできた。
この結果、物流関連事業の営業収益は489億4百万円(前年比3.4%増)、セグメント利益(営業利益)は11億17百万円(前年比4.1%減)となった。

④公開買付者による本公開買付けおよびその後の一連の手続を実施することにより当社株式が上場廃止となる予定であることから、2025年3月期の業績予想は非公表。

⑤2022年5月30日に中期経営計画である「ありがとう創造計画」を公表し、本中期経営計画の実現に向けて、輸送・物流サービスの拡大、DX推進、人材投資など、様々な施策に取り組んできた。しかしながら、物価上昇による購買意欲の低下、原油価格の高値安定の継続による燃料費の高騰、商品の流通形態が実店舗での購買からネット環境へと消費様式が変化したことによる企業間の貨物輸送物量が伸び悩んだことなどの市場環境の悪化に伴い、2024年3月期の営業収益は49,687百万円(本中期経営計画における計画値52,000百万円対比4.45%減)、営業利益は758百万円(本中期経営計画における計画値1,880百万円対比59.68%減)、経常利益は886百万円(本中期経営計画における計画値1,930百万円対比54.09%減)となっている。このような本中期経営計画公表後の事業環境の変化および直近の当社グループの業績などを踏まえると、本中期経営計画の最終期となる2025年3月期の数値目標(営業収益54,000百万円、経常利益(利益率)2,160百万円(4.0%)、ROE(5.0%))についても、その達成が困難となる見通しが高いと判断し、本中期経営計画の数値目標を取下げることとした。

⑥2024年5月15日開催の取締役会において、いわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)の一環として行われるトモエによる当社の普通株式に対する公開買付けに賛同する旨の意見を表明するとともに、当社の株主に対して、本公開買付けへの応募を推奨する旨を決議。社長の山口嘉彦さんが、トモエの代表を務める。買付価格は、普通株式1株につき1,460円。買付期間は、2024年5月16日から2024年6月26日まで。
1株純資産2,563円を大きく下回る1,460円でのMBOに違和感。

⑦公開買付者は、本公開買付けの実施にあたり、2024年5月15日付で、当社の第2位株主である大垣共立銀行との間で、その所有する当社株式500,880株(所有割合4.56%)の全てについて本公開買付けに応募する旨の契約を、第3位株主であるみずほ信託銀行との間で、その所有する当社株式500,000株(所有割合4.56%)の全てについて本公開買付けへ応募する旨の契約を、第4位株主である十六銀行との間で、その所有する当社株式493,989株(所有割合4.50%)の全てについて本公開買付けへ応募する旨の契約を、第5位株主である三菱UFJ銀行との間で、その所有する当社株式385,000株(所有割合3.51%)の全てについて本公開買付けへ応募する旨の契約(以下「本応募契約を、第6位株主である明治安田生命保険との間で、その所有する当社株式363,863株(所有割合3.31%)の全てについて本公開買付けへ応募する旨の契約を、第10位株主である市川工務店との間で、その所有する当社株式320,500株(所有割合2.92%)の全てについて本公開買付けへ応募する旨の契約を合意。

⑧2024年4月11日、山口嘉彦さんは、有価証券報告書や決算短信などにおいて財務情報などの資料などに基づく当社の事業および財務の状況、提案日の前営業日である2024年4月10日から過去6ヶ月において当社株式の終値の最高値が934円であること、および本公開買付けに対する応募の見通しなどの各種要素を総合的に勘案し、当社に対して、本公開買付価格を1,200 円(提案日の前営業日である 2024 年4月10日の当社株式の終値 873円に対して 37.46%のプレミアムを加えた金額)とする旨の初回提案をおこなった。これに対して、山口嘉彦さんは、2024年4月19日に、当社より、2024年4月18日に開催された本特別委員会において検討した結果、初回の提案価格は当社の少数株主の利益に十分に配慮された金額とはいえないとの結論に至ったとして、本公開買付価格の再提案の要請を受けた。
当該要請を受け、山口嘉彦さんは、本公開買付価格について、慎重に検討を進め、経済産業省が「公正なM&Aの在り方に関する指針」を公表した 2019年6月28日から以降、2024年4月23日までの間に公表されたマネジメント・バイアウト(MBO)事例56件における平均的なプレミアム水準(公表日の前営業日を基準日として、基準日、基準日までの過去1ヶ月間、同過去3ヶ月間及び同過去6ヶ月間の終値単純平均値におけるそれぞれのプレミアム率の平均値(42.35%、44.83%、47.97%および 48.02%)も踏まえ、2024年4月24日に、本公開買付価格を1,320 円(提案日の前営業日である 2024年4月23日の当社株式の終値873円に対して51.20%のプレミアムを加えた金額)とする旨の2回目の提案をおこなった。これに対して、山口嘉彦さんは、2024年4月26日に、当社から、同日に開催された本特別委員会において、当社の第三者算定機関による当社株式の株式価値の試算結果を踏まえて再度検討した結果、本特別委員会より、2回目の提案価格は当社の少数株主の利益に配慮された金額とはいい切れないとの結論に至り、本公開買付価格の引き上げを再度要請することが適切である旨の意見が示されたとして、本公開買付価格の再提案の要請を受けた。
当該要請を受け、山口嘉彦さんは、本公開買付価格について、慎重に検討を進め、2024年4月30日に、本公開買付価格を1,400円(提案日の前営業日である2024年4月26日の当社株式の終値856円に対して 63.55%のプレミアムを加えた金額)とする旨の3回目の提案をおこなった。これに対して、山口嘉彦さんは、2024年5月1日に、当社から、同日に開催された本特別委員会において再度検討を行った結果、本特別委員会より、本公開買付けは当社の株主に当社株式を売却する機会を提供するものであり、長期的に当社株式を所有する株主の利益にも一定の配慮が必要であるとの認識に基づき、本公開買付価格の引き上げを再度要請することが適切である旨の意見が示されたとして、本公開買付価格の再提案の要請を受けた。
当該要請を受け、本公開買付価格について、慎重に検討を進め、山口嘉彦さんは、2024年5月7日に、本公開買付価格を1,455円(提案日の前営業日である2024年5月2日の当社株式の終値876円に対して66.10%のプレミアムを加えた金額)とする旨の4回目の提案をおこなった。これに対して、山口嘉彦さんは、2024年5月8日に、当社から、同日に開催された本特別委員会において再度検討を行った結果、本特別委員会より、本公開買付価格は少数株主に一定程度配慮されていると評価できるものの、過去の市場株価の状況やPBR(株価純資産倍率)水準にも配慮が必要であるとの認識に基づき、本公開買付価格を再度要請することが適切である旨の意見が示されたとして、山口嘉彦さんは、本公開買付価格の再提案の要請を受けた。
当該要請を受け、本公開買付価格について、慎重に検討を進め、山口嘉彦さんは、2024年5月13日に、最終提案として、本公開買付価格を1,460円(提案日の前営業日である 2024年5月10日の当社株式の終値1,028円に対して42.02%のプレミアムを加えた金額)とする旨の提案をおこなった。これに対して、山口嘉彦さんは、2024年5月14日に、当社から、同日に開催された本特別委員会において再度検討をおこなった結果、本特別委員会より、本公開買付価格について、当該提案を応諾する旨の回答を受けた。
MBOにおいては、経営陣が株主還元やIR対応など企業価値向上に向けた取り組みを軽視することにより、意図的に低株価が放置され、プレミアムを上乗せしてもなお低株価で買収することも可能。東京証券取引所が、PBR1倍割れ企業に対し改善要請をおこなう中でのPBR1倍割れでのMBOについては、制度上の欠陥を感じる。

⑨トモエによる公開買付けが成立することを条件に、2025年3月末より株主優待制度を廃止を決議。

⑩質疑応答で、「上場廃止により、上場企業で働くという社員のモチベーション低下が心配。」との意見あり。

⑪質疑応答で、「将来的な拡大計画は?」との質問あり。「国内物流の規模は変わらない。輸入の取り扱いは増える。ドライバー不足が深刻で距離が出せない。倉庫・物流加工や他社との協業に力を入れる。」との旨の説明あり。

⑫質疑応答で、「物流2024年問題で、貨物輸送の需要は変わらないが、輸送能力不足となるため、輸送運賃の値上げ交渉がしやすい環境にあると思う。値上げ交渉の状況は?」との質問あり。「エスラインの特積み貨物については、55.5%の得意先で値上げを実施済み。全体で見ると金額で4%の値上げができている。」との回答。

⑬取締役候補者5名中、70歳以上の候補者は白木武さん(1952年生まれ、71歳)の1名。役員定年制(一般的には65歳~70歳)を設定して、未来のために次世代育成を進めたほうがよいと思う。

⑭監査等委員である取締役を除く取締役7名の報酬等の総額は7,500万円。2023年6月に退任した2名を3ヶ月分として計算すると、単純平均で取締役1人当たり1,363万円。

⑮議案の採決方法は、議長の「意義ありませんでしょうか?」の問いかけに対し、「異議無し」の発声や拍手での採決。議決権の過半数を保有する大株主もいない状況で、出席者により保有している議決権数も違うので、デジタル時代に会場の「異議無し」の発声や拍手の多数で賛否を決めるのでは基準が曖昧に感じる。投票方式を採用したりして、その場で数字で示したほうが株主総会に出席している株主から見て納得感がある。

 

株主総会を終えて感じたこと

株主総会時点、株式は未保有ですが、今回、実際に社長や取締役を間近に見てその振る舞いを確認できたこと、会社の雰囲気を感じられたことが株主総会に参加した大きなメリットでした。

株主総会終了後に、会場出口で、役員一同から見送りがありました。

今回、1株純資産2,563円を大きく下回る1,460円でのMBOに大きな違和感を感じました。

MBOにおいては、経営陣が株主還元やIR対応などの企業価値向上に向けた取り組みを軽視することにより、意図的に低株価が放置され、プレミアムを上乗せしてもなお低株価で買収することも可能です。

MBOを実施する側が、安く株を買い占めたいと考えるのは当然であることを踏まえ、PBR1倍以下でのMBOを実質的に禁止とするような、何かしらの制度の改善が必要だと感じました。

東京証券取引所が、PBR1倍割れ企業に対し改善要請をおこなう中、運賃値上げも進んでおり、これから業績が向上するようにも思えたので、上場廃止は残念であり寂しいですが、今後の他社のMBOの参考にしたいと思います。

 

株主総会会場のホテルグランヴェール岐山
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