日本証券金融 臨時株主総会
日時:2023年2月7日(火) 10:00-11:10
場所:日本証券金融本社(茅場町駅徒歩2分)
出席株主数:約50人
お土産:無し
企業概要
日本証券金融(8511)
①制度信用取引の決済に必要な資金や株券の貸付をおこなう「貸借取引業務」(売上構成比20%)、一般信用取引の決済に必要な資金の貸付などをおこなう「セキュリティ・ファイナンス業務」(売上構成比51%)、顧客分別金信託などの信託業務などをおこなう「信託銀行業務」(売上構成比9%)、所有する不動産の賃貸をおこなう「不動産賃貸業務」(売上構成比2%)、国債等の有価証券運用などをおこなう「その他の業務」(売上構成比16%)を運営。
②筆頭株主は、THE SEP VALUE REALIZATION MASTER FUNDで、1,262万株、14.1%を保有。
今回の臨時株主総会の請求をしたストラテジックキャピタルも第7位の株主として、310万株、3.4%を保有。
③2022年6月23日に開催された第112回定時株主総会での株主提案に引き続き、ストラテジックキャピタルより天下り調査の臨時株主総会の請求を受ける。
株主総会での個人メモ
①株主総会の会場は、日本証券金融本社内にある会議室での開催でした。注目されている株主総会だったようで、株主総会会場入り口に、報道陣が詰めかけていました。提案株主および日本証券金融の双方からの申立てにより、株主総会検査役が選任。株主総会の様子が複数のビデオカメラで撮影されていました。会場の天井にも複数の防犯カメラが設置されているのが印象的でした。
②株主総会開始後、今回の臨時株主総会の請求をしたストラテジックキャピタルから、議案の説明がありました。
③質疑応答では、質問者は名前を名乗る必要が無く、出席票の番号のみを伝えてから質問するスタイルでした。個人情報保護の観点から良い対応だと思います。質問が途中で打ち切りとなってしまったものの、社長の櫛田誠希さん、ストラテジックキャピタルの双方ともに丁寧な回答をされていました。
社長の櫛田誠希さんの落ち着いた様子から、事前の議決権の行使状況により議案が否決されることが分かっていたのかもしれません。
④ストラテジックキャピタルは、「1950年の上場以来、櫛田誠希氏を含む当社の歴代社長が全員日本銀行の出身者かつ同行において理事を経験した者であり、当社の歴代社長の経歴には不自然かつ著しい偏りが存在している。」として櫛田氏人事の調査を要求。
⑤ストラテジックキャピタルは、「1980年以降、日本銀行出身者のうち、岡田豊氏を含む日本銀行において局長を経験し、理事を経験していない者が当社の常務又は専務の地位に間断なく継続して就任しており、当社の常務又は専務の経歴には不自然かつ著しい偏りが存在している。」として岡田氏人事の調査を要求。
⑥「天下りは、みなし公務員がその立場を利用し、天下り先の高い地位と高額報酬を得るという点ではESGの「S」、社会正義に反する。また、経営幹部の人事が個人の資質と無関係に行われるという点ではESGの「G」、ガバナンスの根幹たる取締役選任の公正さの欠如を意味する。つまり、多数の天下りが存在する当社には、ESGの「S」及び「G」に係る重大な課題が同時に存在している。本来であればその不合理を追求すべき指名委員会も長期間に亘る天下りを黙認しており、当社のガバナンスの自助努力による是正は期待できない。従って、天下りを招いた経緯を解明し、当社において真のESG経営を実現するため、本議案の調査者による調査を提案する。」とのストラテジックキャピタルの主張。
⑦ストラテジックキャピタルは、「1960年以降、樋口俊一郎氏を含む財務省又は大蔵省出身者が当社の常務、専務又は副社長以上の地位に間断なく継続して就任しており、当社の常務、専務又は副社長の経歴には不自然かつ著しい偏りが存在している。」として樋口氏人事の調査を要求。「当社における財務省OBの役員選任は、国家公務員法違反の結果である可能性が強く疑われ、これはESGにおける「S」及び「G」の根幹に係る重大な問題である。」との主張。
⑧ストラテジックキャピタルは、「飯村修也氏を含む東証出身者が、1974年以降、取締役又は監査役として、間断なく継続して就任しており、当社の取締役又は監査役の経歴には不自然かつ著しい偏りが存在している。」として飯村氏人事の調査を要求。「社外取締役の独立性と適性はESGにおけるガバナンスの根幹を成すものであり、本調査を通じて、飯村修也氏の就任が当社による公正な人事の結果であるか否かを明らかにすべき。」との主張。
⑨質疑応答で、「商号を日本天下り金融へ変更する」との動議がありましたが、適法ではないとの理由で、本動議は却下とされていました。
⑩質疑応答で、「本調査要求は日本金融証券の潔白を証明するものでもあるので、日本証券金融も株主提案にある程度歩み寄れるのではないか?」との質問が出ていました。今後、役員選任プロセスの強化を行うとのことで、調査要求は拒否するとの回答でした。社長の櫛田誠希さんの後継者は公共部門出身者を含めない方針とするとの説明もありました。
⑪1株当たり純資産1,556円に対し、2023年2月6日時点の株価は1,083円であり、PBR 0.69倍。解散価値であるPBR 1倍を大きく下回っており、企業価値向上への努力不足を感じます。
⑫執行役6名の報酬等の総額は29,887万円。単純平均で執行役1人当たり4,981万円。ストラテジックキャピタルから、「天下りにより報酬が前職の3倍になっているのが問題」との指摘がありました。
⑬議案の採決方法は挙手での採決でした。会場の出席者の約7割が挙手をして賛成していた一方で、全ての議案が否決との議長説明でした。事前の議決権行使結果によるものと思われますが、違和感のある採決方法に感じます。
議決権の過半数を保有する大株主もいない状況で、出席者により保有している議決権数も違うので、会場の挙手の多数で賛否を決めるのでは基準が曖昧です。株主総会検査役が選任されている状況なので、投票方式を採用したり、事前の議決権行使の具体的な数字を示したほうが株主総会に出席している株主から見て納得感があるかもしれません。
株主総会を終えて感じたこと
株主総会時点、株式は未保有ですが、ストラテジックキャピタルによる天下り調査の株主提案に対して、日本証券金融がどのような態度や説明を取るのか興味があり、株式を保有していました。
今回、実際に社長や取締役を間近に見てその振る舞いを確認できたこと、会社の雰囲気を感じられたことが株主総会に参加した大きなメリットでした。
また、尊敬する某著名個人投資家にお会いできたことも今回の株主総会の嬉しいポイントでした。株式投資に対する姿勢や向上心、目標に向かう姿勢や言動を自身の学びにしたいと思います。
日本証券金融への天下り問題がクローズアップされた株主総会でしたが、統合報告書を初めて作成したり、社長の櫛田誠希さんの後継者に公共部門出身者を含めない方針を出したりするなど、変化も見受けられます。証券市場のインフラの担い手として、透明性のある経営を期待しています。